携帯電話でいいじゃん
こんな日に限ってこどもはなかなか眠ったりしない。
メアエリスは見るもの珍しく、興奮状態だった。
「メアエリス、寝ないの?」
「うんっ。」
「………。」
「カノン、起きて?」
あまつさえ、隣の寝室で眠っているヒトを揺すり起こす。
こどもだから仕方ないっていうけど、こどもだから何なんだっと思うニチカ。
「……………………メア、寝ろ。」
「…でもぅ……。」
「ドア閉めてこっち来い。」
布団を開けて待つ所に飛び込んで行ってくれた。
これでようやくひとりになる。
テーブルにある通信機を、教えられた通りに弄ると、ピッピッピッと音が出た。
しばらくその音が響く。
壊れたかと思うくらい。
『…こんな時間に〜………何だい?』
「シアさん…!?」
『ん〜………?ニチカ〜?カノンと一緒なのかい?』
「うん。みんなとも。カードキーの部屋、見付けたよ。片付けしといたし、布団も干しておいたから。」
『気が効くね〜wありがと〜。』
「別に…ただあのままだと自分が生活しにくいってゆーか…。起こしてごめん。切りますね。」
『え〜、もっと話そ〜よ〜。ニチカの声聞きた〜い。』
「そんなにさ………………。」
『何〜?』
「そんなに聞きたいなら……会いに来てよ。」
『ニチカ…。』
馬鹿だ。
彼が、自警団ギルドを立て直す為に非常に忙しいことは知っているし、それに、気持ちのすれ違いも知っている。
「なんて、冗談ですwシアさん、頑張って下さい。……応援、してるからさ。」
『…あははw最近思い通りに物事が動かなくて嫌になってたけど、何か元気出た〜wそうだ。部屋に予備の通信機があるんだけど〜、ニチカにプレゼント。使って〜w』
そういえば掃除中に見掛けた。
引き出しにしまったのを思い出して、開けてみると綺麗に収納されてある。
これでいっぱいお話ができる…嬉しいけど本当のことは言えない。
「…また、連絡していい?」
『朝と夜は大抵暇だからね〜wじゃあバイバイ。好きだよ、ニチカw』
「恥ずかしいなぁ、もう!/////好きとか軽々しく言うと俺みたいに大変な目に合いますよ。」
『知ってる〜。だからニチカだけに言ってるんじゃないか〜。』
「……そんな事言われたらさ…余計会いたくなるし。」
『一段落したら戻るよ。待っててくれるかい?』
「かっ、考えとく。」
『ありがと〜。またね〜、ニチカ。』
「うん。…また。」
途切れた通信機にキスをして、しばらく静かな夜を過ごした。
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