引き返せないのではない 「たっだいまーっ★この街の依頼受けてきたよ!…って、何?このアツアツ〜な空気。」 「気にしない気にしない〜。依頼は何〜?」 「ワタシ達がここに来る少し前に、街の入り口にある時計台の動力である魔晶石が盗まれたからぁ、取り返して欲しいってぇ。」 「ハードそうなん持ってきやがって…。他に情報はねーのか?」 「人間が南へ逃げるのを見たってぐらいねぇ。」 「追い掛けよう。今ならまだ周辺に居るかもしれない。」 一行は宿屋を出た。 街を出て平原を道なりに南へと歩いて行く。 途中で魔物と戦う兵士を見た。 遠目で初恋を見ながら歩いていたが、やっぱりまだ涙が溢れそうになってしまい、足を止めて瞼に力を入れる。 ニチカがそっと背中を押してくれた。 「…どうしたの?」 「何でも…ない。だいじょうぶw」 「疲れたりしたらちゃんと言ってね。」 「はいw」 足どりを掴むために近くの村に話を聞くために寄った。 狩猟をしていた男性が、怪しい団体が南下していくのを見たと言う。 ここから南下と言えば、入国管理局だ。 だが、怪しいと言われる奴らが通過できたとは思えないし、まず自分達が通るのは困難かもしれない。 「ここが無理ならお隣さんから行くしかねーぜ?」 「それはかなりの遠回りになるしな〜…。」 「スタークエイクの貿易船は不定期だから当てにはできないよ。」 「選択肢はない。行くぞ。」 危険を覚悟に入国管理局を通る。 こちら側は疑われながらも余裕で通過、問題はここからだ。 捕まる覚悟だったが、まさかのエラーが発生した。 予期せぬエラーとも言う。 「カノン殿下!?」 「…ノエル!」 「あ!お待ち下さい!ご無事でよかった。陛下勅令の任務として殿下を探していました。本当にご無事でよかったです。」 カノン、無罪と処理された。 国の調査の結果、何者かに襲われたジルベールを助けようとカノンは、傷を負いながらも犯人を捕まえようとしたとして、名誉を称えられている。 複雑な心境だ。 「ノエル…俺は……訳あって帰る事ができない。」 「何故です?」 「人助け中なんだ。」 「私が任務を引き継ぎます。」 「無用。…とにかく、俺はステルメークには帰れない。陛下にはそう伝えろ。」 どさくさに紛れて、カノン達はこの場を通過した。 英雄扱いされているなら、とことん立場を利用する。 もう、戻れない【道】なのだから。 【前n】/【章n】/【次n】 |