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癒しの歌
「やっばぁーいw大判小判がざっくざく♪パーティしよパーティ!」

「ギルド資金の横領は認めない。それより、仕事はないのか?」

「仕事熱心過ぎだし。少し…街を見てみたいな。」

「……わかった。」

霧の里/アルミスト。
周囲が奇妙な霧に覆われているが、それを抜けると華やかな街が姿を現す。
ドームのような形の建物ばかりだ。
屋台が並ぶ場所を歩いていると、後尾のメアエリスが居なくなっていた。

「ちょっと待って。メアエリスが寄り道してる…。」

「…気付かなかった。」

「監督不行き届きだな〜。」

「メア!早く来い!」

「カノンカノン、来て来て!」

逆に呼ばれてしまった。
渋々向かう。
メアエリスは屋台と屋台の間の路地を見ていた。

「何?」

陰の路地で男女が恥じらっている。
そちらを指さして何かを訴える。
モラルのカケラもない。
目隠しをしたが、払いのけてまた指をさした。

「あれ…。」

「あまりヒトをジロジロと見るモノじゃない。」

「ヒト?そっちじゃなくてね、そこ。僕の顔が描いてあるの。」

視線をずらすと看板があり、尋ねビトとして彼の似顔絵があった。
高額の値が書かれている。
カノンは辺りを気にし、メアエリスに自分のジャケットを被せて抱き抱えて、仲間の所へ走る。
貼紙を忘れずに剥がして。
理由は後でと宿屋で部屋を借りた。
ゆっくり説明する。
タレイアは依頼を探しに抜けた。

「厄介だね〜。」

「でもさ、この似顔絵なら………当分安心だよ。メアエリスはこんな不細工じゃないしさ。」

「名前も変わってっからな。」

ほぼ色しか似ていないこんな絵が世界中に配布されたって何も変わらないだろう。
カノンは向こうを向いていた。
宿屋に入った理由はもうひとつある。
腹の傷が疼くのだ。
横になれば落ち着くけど、痛いに変わりない。

「……カノン…。」

今こそ癒しの歌を。
メアエリスが祈ると本が反応してセイレーンの歌声を呼んだ。
地平線の見える水面を、風に運ばれた葉っぱが滑る様に流れていく情景が思い浮かぶ。
自分以外みんな、眠ってしまった。

「…あ、れ?カノン?」

暇だ。
話し相手も遊び相手も居なくなる。
暇を手にしてしまったヒトの考えることはよくわからない。
メアエリスは、外に出た。
そして、気付けば港に居る。
港には、大きな船が来ていた。
紋章を掲げた、大きな船が。


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