信じてるから…お願い 事件の三日後、ジルベールの遺体が搬送されてきた。 現場から西の橋まで血行が綴られて、川岸からは羅生刹カノン殿下の物だと思われる名前入りのシルバーリングが見付かる。 犯人の目星が付けられた。 全て、生きていたらの話だが。 「本当の事言わなくて…いいんですか?きっとあの子、事態を理解してませんよ?」 「………言うよ〜。けどね〜…可哀相でしょ〜。」 「いつまでも隠していられる問題じゃありません。」 何も知らないメアエリスは、シアの部屋にある、挿絵の入った本を見ていた。 まだカノンの帰りを待っている。 彼は【お出かけしてる】と何度も心の中で囁いて。 言うなれば現実逃避。 「ねぇ、メアエリス。」 「………ニチカさん?」 「あのさ……大事な話なんだけど、さ。」 「だ、い…じ。」 「あの、カノン様…は。」 さっきまでこちらを見ていたが、急に本を見始めた。 ペラ、ペラとページをめくりながら言う。 「カノン様、いつ戻って来るんです?早く一緒にけぇきが食べたいです。」 「……違う、違うの。カノン様は………だから、その…………………もしかしたら、だよ?もしかしたら、死んで……るかも………。」 「…………嘘。」 「もう戻って…来ないかもってさ……。」 「そんなの嘘…。」 「メアエリス、だから…!」 「…嘘だもん。カノンはっ、カノンはちゃんと帰って来るもん!死んでなんかないもん!!」 わっと泣き出した。 知ってたのだ。 びーびー泣く彼に寄り添い、シアは抱っこして慰める。 「カノンは死んでないの〜?」 「………ないもん…。」 「じゃあ帰って来ないなら迎えに行っちゃおうか〜w」 「いく………。」 「え?シア様?」 「急いで準備しておいで〜。すぐに出発しようね〜。」 涙を拭いて慌ててカノンの寝室に走って行った。 その間に自分も身支度をする。 「本当に…行く気ですか?!知られたら共犯者に…。」 「怖いなら待ってればいい。ニチカなら射撃部隊のエースになれるさ〜w俺とアサトの運命は決まってるんだ。」 「何…それ。親衛隊?」 「とはちょっと違うかな〜。正直言えば、私欲なんだよね。好きな事して生きていきたいじゃないか〜w」 確かに、ここに居ては退屈してしまう。 やりたい研究を自由にやる事が出来ないし、仕事は多いし。 迷うニチカと正反対のメアエリスが荷物を持って戻って来た。 小さなポシェットと小さな水筒を下げ、ポンチョと肩のガードを持って、笑っていた。 シアはその肩ガードを彼に装着させ、ポンチョを羽織らせる。 リボンを結びながら聞いた。 「ニチカ〜、どうするんだい?」 「…行きます!シア様の付き人としてここに居る訳ですし。」 「よしよし〜w。」 元々旅をしていた彼の荷物は少なく、簡単に支度を済ませる。 裏口から出ていく途中でアサトとタレイアと合流した。 やはり使命らしい。 まず東側から町を出て、それから地図を開いた。 「海に流れて行ってたりしてな。」 「いや〜、この三日間流れが穏やかだったから〜……確か近くの村付近で底が見えるくらい浅くなってたはず。」 「んじゃ、その村目指してみっか。」 川沿いを辿りながら歩く。 振り返れば一生懸命ついて来るメアエリス。 ここは街の外、あまり離れてしまえば魔物に襲われた時に対応できない。 おまけに目を擦りながら歩いて、木の枝に躓いた。 「メーアちゃんwほら、おんぶしてやるよ。」 「んにゅ…。」 素直に背中を借りる。 感情の波に疲れて眠っている内に、小さな村に着いた。 シアとニチカに調査を任せ、残りは待機。 【前n】/【章n】/【次n】 |