ページ:24 白き都 プルグラス。 建物全てが白壁で設計されている。 街ビトは皆、爽やかな表情をしていた。 宿で解散して自由時間になったので、エリズィムは外に出てみた。 無性に果物が食べたくなったのだ。 「うおーい!リズちゃん!」 「おう。」 「俺も一緒していい?」 「いいヨ。…ちょうどいいな。おまえ、カノンが好きなフルーツ知らないか?」 「フルーツ?あいつあんまり食わねーんだよなー。マルシャちゃんが居た頃はイチゴとか食ってたなw」 「マルシャもイチゴ好きなのか?」 「好きかどうかはわかんねーけど、イチゴのショートケーキばっか食ってた。」 青果にやって来て、どれを食べようか迷いながら、イチゴを気にしていた。 これをカノンに見せたら、マルシャのことを思い出してしまうのではないだろうか。 彼が懸命に思い出そうとしていることは知っている。 それを邪魔することは、余計カノンに嫌われてしまうんじゃないだろうか。 「うー…。」 「ど、どうした?!」 「オレがカノンに捨てられたら、おまえはオレを拾ってくれるか?」 「もちろんw手、付けていいなら今すぐにでもw」 「キモい。おい、リズはイチゴが欲しいぞ!」 「ついでにみんなにも買っていってやろうぜ。」 バスケットいっぱいに果物を買って大満足のエリズィム。 宿屋ではやはり2部屋借りていて、男部屋に走っていく。 お見舞いに行くと言って別れたアサトから借りた鍵を使い、断りもなく部屋にはいると、ベットに仰向けで寝ているカノンに走り寄った。 何もしたくない、顔から滲み出ていた。 「おい。…寝てるのかヨ?」 「……どうした?」 「オマエ、何も食べてないから、食い物買ってきてやった。」 「いらねーよ。」 「そう言うと思って、【イチゴ】買ったぜ。これなら、食うんだろ?」 「……食わねーよ。」 そう言いつつ、バスケットからイチゴを一粒とって、じっと見つめる。 彼を見て、切なくて悲しい気持ちになった。 その表情が苦手だ。 自分の心がえぐれるような、変な痛みが伝わる。 「なぁ、カノン。オマエが探しているキオク…リズ、知ってるヨ。」 「…何の事だ?」 エリズィムが2枚の写真を差し出すと、カノンの瞳から、突然涙が一滴だけ流れ落ちた。 この反応に、嫌な予想がついてしまう。 メアエリスとマルシャには、敵わない。 彼のためになれるのならばと、知っている情報すべてを話すことにした。 みんなから聞いた2人のことを。 「メアエリスも、マルシャも、死んでない。カノンに会う前、リズは2人に会ってる。」 「…そうか。………俺、凄く大事なことを忘れていたんだな。」 「ホントは、言いたくなかったヨ。」 イチゴを口にする。 赤みの足りないイチゴはまだ酸っぱくて、気分が地面に張り付きそうだ。 「リズ、俺は2人を探さなければならない。そんな気がするんだ。でも…心配すんな。俺の心はそう簡単に動かねェ。愛してんのはオマエだけだから。」 「信じ…てるぜ、カノン。」 「あぁ。」 「ふあー!w何かモヤモヤがスッキリしたぜwなあ、メアエリスよりマルシャを探した方がいいぞ。肉体がないからリューシカが始まってるかもしれないってペルセウスから聞いた。」 「粒子化が?…エルネキア族のアルバーを探す前に、優先するべきだが、どうやって探せばいいんだ?」 「……リズが見たのはだいぶ前だヨ。」 手がかりは何一つなく、雲行きは怪しいが、お互いの謎が解消されたことらとても嬉しい。 エリズィムはもうひとつイチゴをかじった。 今度はとっても甘かった。 【前n】/【章n】/ |