籠の中の鳥 カノンは用事があると言って出掛けていった。 寝ぼけていた目をパッチリ開き、行動を開始する。 とりあえず、一緒に旅をしたという男達の話を聞きくため、まずは制御室へ向かった。 ニチカが目の下にくまを作ってボーッとしている。 「オイ、ちょっと聞きたいことがあるんだ。」 「おはよう。聞きたいこと?」 「あのなー、マルシャって何だ?」 「それ、昨日の写真?マルシャはね、優しい子だったよ。ブレイントランスポートされたエルネキア族だったんだけど…。」 マルシャの正体を教えてもらった。 どうやって死んだのか、どうやって愛し愛されたのかがを知る。 それを聞いてさらに思い出して欲しくなくなった。 もうひとり、メアエリスという女性については知らないらしいから、アサトを探しにあちこち回ると、ニチカとイチャイチャしてた男に出会う。 「あ〜、リズちゃんだ〜w」 「おまえ、メアエリスってヤツを知ってるか?」 「…………知ってるよ〜。」 「教えてスはカノンより1つ下で、貴族の中でも最も王室側に近い子。 生まれはアストレイランドだった。 見た目は、金髪のロングヘアー、彼女もまた蒼い瞳の持ち主で、常にツンとした態度のお嬢様。 でも2人きりになると少しは女の子らしくなる。 2・3年は付き合っていたんではないだろうか。 毎日が華のある生活が続くわけもなく、ある夏の日、カノンとメアエリスは大喧嘩をし、メアエリスは彼の頬を叩くと、走り出してどこかへ行方を眩ませた。 そして、汗まみれになって1日中探したら、教会の祭壇にもたれ掛かって、扉まで血を流し息絶えた姿を見付けたのだった。 「犯人はわからなかったんだ〜。」 「……。」 「…聞いてたかな〜?」 「2人は、【ホントに死んだ】のか?」 「エリズィムちゃん、何か知ってそうだね〜。カノンが好きだから2人を知りたい。それはわかるんだ〜。でもね〜、そこまで執着してると〜、【2人は生きてる】からカノンに捨てられたら〜…みたいな感じにしか見えないんだよね〜。」 「死人が生き返るワケないだろ。カノンに2人のキオクがなくてだな………っ!」 エリズィムは口を押さえたが遅かった。 この話の続きは別室で聞こうじゃないかと、腕を掴まれてやってきたシアの部屋。 山積みの本を慣れたように掻き分けて、椅子に座る。 「物置小屋?」 「あはは〜wメアエリスが死んで数日後に〜、カノンの記憶から綺麗に消えちゃったんだ〜。マルシャに出会って名前位は思い出したんだけどね〜。今度は両方か〜。」 「……。」 「内緒の話はここから〜wリズちゃんの言ってた事〜、間違いだとは言い切れないよ〜。メアエリスが死んで〜、葬式を行う直後に遺体が消えたんだ。マルシャだって俺らが遺体を見た訳でもない。ず〜っと納得いかなくてね〜。」 「……おまえ、アイツに言わないか?アイツだけじゃない。みんなにナイショにするか?」 「俺の口からは言わないかな〜。」 「嘘臭いヤツだけど、頭良さそうだからおまえに言う。…ラビルジオラに居たオレのナカマ、メアエリスに殺された。リズはヤツに追われて逃げてたんだが、途中でマルシャからこの本をアズカった。写真しか見たことないから、本人かどーかはわからないけど。」 「……なるほど〜。」 シアは古びたファイルを開いて、書き込んではページをめくり、また書き込み、書き込んだと思えばページが戻ったり。 事件ファイルみたいなものだ。 奴らの正体を知ることは、エリズィムにとっても利点になる。 「やっぱり頭イイんだな。」 「あっはっは〜w」 大事な話の最中、扉が開く音がした。 ニチカがやってきてしまったのだ。 「ちょっと、シアさーん?アルカディル将軍様がお探しですよー!」 「はいはいは〜い!すぐ行くよ〜!……ニチカスネるから〜、もう少ししたら出てね〜。」 「ダイジョブだ。オレは窓から出られる。何か分かったら……教えてくれるか?」 「うんwその代わり〜、エリズィムちゃんも何かあったら言ってね〜。じゃ〜また〜。」 窓から跳んで、壁を滑って地面に着地する。 城内を歩き回って考え事をした。 メアエリスが自分を襲ってきたのは、【回収】の為だとすれば、エイレネ…タレイアと何らかの関わりがあるのではないだろうか。 彼女は悪いヒトではないはず。 どうにかして捕まえれば、なにか聞き出せるかもされない。 しかし、彼女は敵で強い。 独りだとまたやられて、今度は確実に回収して【パーツ化】されてしまうだろう。 彼女を捕獲するいい手はないものか。 「お♪エッリズィッムちゅわーんw」 「ん?……ん!おー!」 「へ?!」 太い木の枝に乗っているアサトの上に乗るエリズィム。 こいつならいけるんじゃないか? 「オイ、手伝って欲しいんだ!」 「ななななな、何だ?!」 「……でもなー、やっぱりダメだ。」 諦めて散歩を続けた。 城に居れば誰からも狙われなくて、すごく平和だ。 言うなれば、ここは鳥籠か。 【前n】/【章n】/【次n】 |