☆殺戮兵器ウィング・ギア 「殿下、民間人連れてきたらマズイと思いますけど…。」 「構うな。…アルカディルには言うなよ、ノエル。」 「さすが2番目にエライ奴。かっこいいな♪リズもそこに座りたいヨ。」 「馬鹿か。黙ってそこに立ってろ。」 「あ、あはは…w」 非常識に驚いたノエルが困り顔で笑う。 そんな彼に突っ掛かっていくのだが、誰に似て喧嘩早いのだろうか。 もうすぐ目的地。 敵が目認できる場所にまで接近すると、ドラゴンに乗って兵士達と共に出撃する。 大樹から出たモンスターは、地上のモンスターを操れるらしく、フィールド内のモンスターは軍に任せて本体に向かった。 ウィング・ギアで隣を付いてきたエリズィムに問う。 「戦ったことは?」 「ないヨ?」 「………帰れ!」 「ダイジョブだ!」 「……邪魔したら、オマエを戦闘用に脳内移植するからな。覚えておけよ。」 「よくわからないが覚えたぞ。」 ドラゴンより走るのが早い。 暇をして後ろに乗ったり、ドラゴンの頭に乗ったりと自由にしていた。 既に到着していたシア、アサトと合流する。 「連れてきたんか?」 「ついてきたんだよ。」 「甘いね〜w1体は簡単に倒せたけど〜、もう1体がなかなか手強いんだ〜。」 「ゴムみてーな奴なんだよ。銃弾は弾くし斬っても滑るし、どっせばいいのかわかんねー。」 「策が思い付くまで戦うしかないな。」 「「了解!」」 戦う3人がかっこよくて、変に憧れる。 もともと兵器として開発されたウィング・ギアなのだから、自分も戦えるはずなのだが、この靴を汚したくなかった。 そう思っていても、不思議と頭の中でイメージできる。 今イメージしたのは、この軟体過ぎるモンスターが炎に焼かれて熔けていく様子。 どこにも火はないのに。 「アサト、ちょい離れる…。」 「デスクワークばっかりしてっからだよw任しとけ!」 「俺も疲れた〜w」 「てめーは動いてねーだろ!」 息を切らしてひたいの汗を拭いた。 情けない。 「イメージできたぜ。リズが倒す!」 「…バカ野郎、待て!」 さぁ舞って魅せましょう。 ウィング・ギアでくるくると地面を滑る。 敵が混乱していた。 想像のままにステップを刻むと、車輪が擦れて足元に炎の魔法陣が描かれる。 そしてそれはエリズィムの左目に憑依し、赤目になっているではないか。 不思議な力を感じた。 敵を切り裂く様に回し蹴りをしたら、触れた部分が溶けてなくなる。 敵は慌てて大樹へと逃げ出した。 「アサト〜、押さえて〜!」 「間に合わねぇ!影も使えねーし!」 「リズ、飛べ!絶対に逃がすな。」 「リヨカイ♪…ほっ!」 カノンの剣先から放たれた光の波が、エリズィムの足場になって敵よりも高く空を跳ぶ。 さっきと同様に回し蹴りをくらわせると、横真っ二つに裂けて塵となった。 地面に降り立った彼女の髪の毛が風で踊る。 心臓に両手を当てて、鼓動を押さえると魔法陣は消え、瞳の色も元に戻った。 勝ったことは嬉しいのだが、喜ぶことができない。 後味悪く、バジリスクに帰還し、城へ戻ってカノンの部屋に移動する。 彼氏の手配により、アパートにあった荷物が全て運ばれてきていた。 ソファーに座ったが、座っただけで、背中が痛い。 カノンはエリズィムに紅茶を差し出す。 「今日は助かった。礼を言う。」 「……結局、リズもウィング・ギアを戦いの道具にしてしまった。」 「オマエは人助けの為にやったんだろ?実際、オマエが居なかったら成す術はなかった。」 「そう、なのか?ウィング・ギアであんなことできるって、初めて知った。やっぱり、兵器なんだヨ。コレ。」 「その自覚さえ忘れなけりゃ、悪用することはないだろう。安心しろ。もしオマエが兵器として活用し始めたら、脚ごと斬り落としてやるからよ。」 「怖いヨ!ヤメテヨ!」 「ぎこちないが女らしく話せるじゃないか。………リズ。」 顔を近づけられて、目が合うと暑いくらい顔が火照った。 頬を触った手の親指が下唇を押し開ける。 柔らかいキスをした。 想いが聞こえる。 エリズィムの頭の中には、優しい気持ちが溢れかえって、気付けはカノンの首に腕を絡めてもっと深くと要求。 「……っあ。カノン、好きだ。」 「ばーか。…こういうときは……愛してるっつーんだよ。」 【前n】/【章n】/【次n】 |