[携帯モード] [URL送信]
再結成!!ファノルアカシック!!
一時的に再結成、ファノルアカシック。
ヒトでは勝てないのだからやるしかない。
一度は滅んだこの身には不思議な力が宿っている。
春臣と海璽には李狐の加護がある。
敵へと呑気に歩き出した。

「やっぱこれが一番好きぃ♪」

「カノンとアサトは見飽きたけど〜、みんな久しぶりだね〜w」

「だからなwニチカ、おめー顔色悪りーけど、大丈夫か?」

「なんとか…。バジリスクって無駄な動力多すぎてさ…あんまりあてにしないでね。それよりさ、陽善は?」

「清明に預けてきました。ね、ハル。」

「おう。さっさと終らせて迎えに行かねぇと、食われちまう。」

和気藹々。
一方、マルシャはいつもの顔ではなかった。
強ばった表情でカノンに背負われる。
みんなに会えて嬉しいけれど、不安と恐怖で胸がいっぱいなのだ。

「そんな力むなよ。」

「……。」

「無理ないわよねぇ。ワタシ達は力の差を目の当たりにしてるんだからぁ。」

そうこうしてるうちに、魔物が押し寄せてくるのが目に見える位置までやってきた。
もうすぐそこ。
ゆとりを持って武器をかまえる。
マルシャは本を開いてフォビアを召喚して、乗り換えた。
まだ傷は癒えていない様子だが、自分を使ってくれてかまわないと意思を伝える。
同様にクリュティも召喚した。

「雑魚とは言え、この数だ。絶対に単独行動はするな。」

了解!と言って各自散らばる。
カノンの援護にはシアが付き、春臣とタレイア、アサトとニチカに、海璽はマルシャのシールドとして離れた位置で待機し、こぼれた雑魚を処理する。
下では次々と消えていく雑魚。
マルシャの眼にはクレフィスのアリスしか映っていなかった。
それは相手方も同じこと。
焦ってはダメだとその時をずっと待ち続けた。

「う〜ん、キリがないね〜。やっぱりクレフィスをどうにかしないと魔物は増える一方かな〜。」

「ならばこの魔物は僕達にお任せください。」

エミルとウルタス、彼らを慕うアネモイ族の元兵士、更には討伐ギルドが参戦する。
こうして道は開けた。

「カノン、マルシャ…行く!」

「俺も行こう。海璽、怪我人の手当てに回れ。」

「わかりました。一段落したら私達も向かいますね。」

低空飛行で飛んできたフォビアの足に捕まり、魔物の上空を飛んで行く。
開けた地面に着地すると、ボレアスとその上空にクレフィスが待っていた。
吹き荒れた風が心地悪い。
遅れて来たクリュティは地面にどっしりと降り立ち、カノンの後ろで羽を休めた。

「アリスよ、こやつらの相手は手に余る位だろう?領土ごと吹き飛ばしてしまえ。」

「はい、ボレアス様。マルシャ、世界は創り直す必要がある。脆きヒトと共に眠れ。」

「マルシャが、今こうしてヒトの形をしているのは、ヒトのおかげ。世界が緑いっぱいで、綺麗なのも、ヒトのおかげ。創り直す必要は、ない!」

「世界を壊すというなら、見過ごせないな。」

「小僧1匹、わしの敵ではない。直々に相手をしてやろうではないか。さぁ、来い。羅生刹カノン。」

カノンは剣を抜き、ボレアスも大剣を抜いた。
そして斬りかかる。
鋼が擦れる音、叩く音が何度も何度も鳴り響いていた。

『奴は力を使いすぎて疲れてきている。今なら勝てるかもしれない。』

『風が……弱まってる。』

「うん。ふたりとも、行くよ!」

強まる風を押しきるように近付くが、なかなかちかづけない。
本を開いて水の波動で風に穴を開け、フォビアで一気に道を走り、雄叫びと共に氷の礫を吐き出した。
風が少し弱まる。
クリュティは空の様子を察知して、マルシャに知らせると、一時後退した。
案の定、灰色の空がファングルを、最終的には全領土を覆い尽くし、摩擦が起きて落雷が風に吸われていった。

「ふふ…あはははw雷よ、万物を壊し尽くせ!」

雷が木へ直撃すると、見る見る内に燃えていき、周囲へ引火する。
各地で同じような事が起きて、大混乱を招いていた。
駄目…駄目…駄目!
燃え広がる炎を見たマルシャは、頭を押さえて下を向く。
そして見たことのない莫大な量の記憶が一気に襲いかかった。
雨が降る。

「悪りぃ!遅くなっちまった!」

アサトが駆け付け、遅れてみんなも来る。
カノンは一度退いて、荒れた息を整えた。
雨は強くなる一方で剣のグリップが滑る厄介な事態に。

「どうした、羅生刹カノン。本気で来ても良いのだぞ?」

「…っ、うるせーよ。」

「少々時間がかかりすぎだぞ?アリス。所詮は出来損ない、か?おまえの力などもう要らん。わしの武器となれ。」

「……要ら、ない?…あっ!」

ボレアスが人差し指と親指をくっ付けると、アリスの首にはめられた輪がきつく絞まる。
苦しみもがく。
ロンモンドギニアスから落下して主の手の内に戻るが、首を捕まれ、更に苦しそうだ。

「そう、要らんのだよ。」

「…!!……ボレ…アス、さ……。」

腹を貫通した手がつかんだのは、彼女が生きている源である、綺麗な、それはそれは綺麗な光を放った結晶だった。
奪われた身体は捨てられると、焦げ付いた地面にどっしり倒れて粒子化が始まる。
あろうことか、マルシャはアリスの所へ行き、身体を抱き締めてあげた。

「消えちゃ…だめ。」

「私は、こうなることを、知っていたらしい。」

「カイちゃん、治癒術ぅ!」

「は、はい!」

精一杯の治癒術を当てた。
タレイア、海璽、マルシャの最高な術を施してみるも、肝心のモノがないため意味がない。
それでも必死に粒子化を止めようと努力した。

「……無駄だ。命は、永遠でも…身体は器でしか、ないのだから。」

ふわりと風が吹くと、粒子が空へと舞い上がる。
サヨナラ。
呆気なく逝ってしまった為に、感情が反応しない。
ただ、ボレアスへの怒りが強かった。

「つまらん、な。風の神よ、こやつらを始末せい。」

「…移送魔法!逃げる気よぉ!」

追いかけたが、高笑いと共に消えてしまう。
風のドラゴンは彼らを襲った。
みんなに向かってタックルしてきたのを、春臣は身体を張って止める。
額に生えた二本の角を捕まえたが、軽くはない身体を簡単にはね除けられてしまう。

「ぐぅっっ!!」

「きゃあっ!おっさん重いぃ!」

「わざとじゃねぇ…。」

「師匠、腕から血が出てっぞ!」

「あぁ?心配要らねぇよ。」

雨は強い。
もはや嵐と言えよう。
このロンモンドギニアス、何故主なき今も攻撃しているのだろうか。
主が消えれば力は解放されて、分裂し眠りにつくはずなのに。

『……あの石、邪悪。』

「石〜?…魔晶石で操られているみたいだね〜。」

「あれ、マルシャも…つけられたやつ。」

「じゃあ操られてるってこと?魔晶石を狙えばいいんでしょ?」

ニチカは銃をかまえて一発放つ。
狙いは悪くなかったのだが、風のシールドが弾道を後ろへと流した。
また上に飛び、一気に向かってくるロンモンドギニアス。
咄嗟にクリュティがシアに寄生すると、なんだか底知れない力を感じ、溢れる力を地面に叩き付けた。
抉れた土が隆起して壁となり、猛突進を防いだ。

「お〜w」

「死ぬかと思った…。突進の時はあの風のガードがなくなるみたい。」

「奴を挑発して誘うぞ。」

部位に攻撃し、怒って突進してくるが、全てニチカに向かってきた。
理由はわからない。

「なんで俺ばっかり……っ!」

足場の悪い荒野、転ぶのは当然だ。
折り返し戻ってきて再度突進してきた。
近くにいたマルシャは咄嗟にフォビアを向かわせて目の前に立ち、両手をかざしてガードをした。
風は軌道を変え、直撃して落下し、地面に土埃をあげて跳んでいった。

「……あぅ…。」

『貴様、万死に価するぞ!』

「マルシャ!起きれるか?」

「…だ、だいじょぶ。……コタロー、聞こえる?今、助けてあげる、からね。」

コタローだと?
カノン達はここで初めて居ないことに気が付かされた。
ロンモンドギニアスは三体を融合させてひとつの器に宿り、力を得る。
もはや取り込まれたコタローには声が届かない。
それ以前にこいつには聞こえていないだろう。

「マルシャ、オマエは下がってろ。俺が解放してやる。」

「……マルシャも、やる。カノン、この剣を…使って。」

剣を受け取った。
すると、フォビア、クリュティが本に戻り、彼は光の粒子となって柄の宝石に吸い込まれていってしまう。
薄れた虹の光色。
想いを、受け取った。

「危ないことするわねぇ…おっさん、次もう一回押さえられないかしらぁ?」

「何回だって…やってやらぁ。」

「待ってください!ハル、貴方はもう限界ですよね?…私が、止めます!」

連携でなんとかカノンに隙を。
まずは的となるニチカに気付かせ、視界をぼやかす為にシアと二人で撃って撃って撃ちまくった。
ギリギリになって回避した後、力を発動し、土壁を作るが当然耐えられる訳もなく、打ち砕かれる。
海璽が杖を地面に刺して魔法陣を目の前に創ると、飛んできたロンモンドギニアスの首が刺さって一瞬動きを止めるが、ガラスのように砕ける魔法陣。
すかさずアサトが後ろに回り込んで乗り上がり、素手で頭の角を押さえた。
風のガードを打ち砕くような協力な炎の魔法を全力でぶつけるタレイアだが、堅くてなかなか上手くはいかなかった。
爆発の煙幕で視界を失った為に暴れまわる。
その向かう先には、カノンが立っていた。
みんなが息を飲んだ瞬間だ。

「コタロー、おまえはただ、マルシャに攻撃しない為に素っ気ない態度を取っていたんだな。…今解放してやる。」

『コタロー、気付かなくて…ごめんね。』

眼を瞑り、精神を研ぎ澄ます。
牙を剥くロンモンドギニアスは匂いを嗅ぎ付けて雷の如く降ってきた。
眼を開いたカノンは刹那の刃で風の幕を切りつけると、ヒビが入り、砕け散る。
そして、最期の降り下ろした剣からは光がこぼれ落ちていた。
ロンモンドギニアスの悲鳴と共に破壊された魔晶石は粉々に荒野の一部となった。
地面に堕ちる。
終わった。
柄から粒子化したマルシャが整形されて、ドラゴンに寄り添う。

「……コタロー……ごめん…ね。」

『…歴史の眼、自分の名は【ライラプス】。長きに渡り、配下が無礼を…。そして自身も、人間に迷惑をかけてしまったこと、お詫び申す。』

「ライラプス…。」

お話ししたいが力尽きたマルシャ。
カノンの腕の中でゆっくり寝息をたてた。
召喚士がおねむのなか、ライラプスは自分を仲間にして欲しいと言う。
かまわないのだが、どうしよう。

「しばらくは起きないだろうな。」

『やむを得まい。自分は…コタローだったか?彼の様に形態を変えることができる。隣に居させてはくれないだろうか。』

「それならかまわない。またボレアスに捕まえられると面倒だからな。」

『よろしく頼む。』

ミニチュア形態になるライラプス。
カノンの肩にちょこんと乗って羽を閉じた。
喉元の毛がパチパチと鳴っていて、正直感電しそうで怖い。
やっと戦の第一ラウンドが終わった、そんな和やかムードを一転させた立っていられないくらいの大地震。
鳥たちが一斉に飛び立ち、地響きが耳の鼓膜を狂わせた。

「何が起きたってんだぁ?」

「尻が痛てぇ…。」

「不自然な地震だったね〜。ひとまず帰ろうか〜。」

「ワタシとマルシャちゃんは帰るとこないんですけどぉ。」

「ステルメークに来い。もしかしたら、例の計画が始まったのかもしれないな…。」

春臣と海璽は日ノ本へ、その他はステルメークへと帰還する。
大地震の影響が心配だ。

【前n】/【章n】/【次n】

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!