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おじいさんと鏡
ステルメークの巨大船は全部で5つからなる。
一番大きな主要エリアには城と大都市、南エリアは海、東エリアは工業地帯、西エリアは学園と基本の居住区があり、建てられたばかりの北エリアには、ギルドの長エミルが仕切る、ギルドの街ができた。
今日、ファノル・アカシックは北エリアに向かい、エミルと対談し、それをアルカディルに報告する。
流石にマルシャは置いていかれた。
ぐっすり眠っているのだから。
自分の身体が光の泡になり消えていく、そんな夢を見た。
怖くて目を冷ますと、枕がぐしょぐしょになっている。
なんともない指先にほっとした。

「……カノンの、部屋?あーうー……やな夢。」

リビングに行くが誰もいない。
また置いていかれたんだなーと思いながら、用意されていたご飯を食べた。
真っ暗な書物の真っ白なページをパラパラとめくって見ていた。
なんと、こんなに快晴なのにもかかわらず、もうじき雨が降るではないか。
大変だとマルシャは出掛ける仕度をして、コタローを召喚する。

「カノン探して。」

従える様子が様になってきた。
ドラゴンは天高く登り、エリアを覆う特殊な膜まで近付く。
あまりにも高すぎて、家が豆粒の様だ。
主要エリアを飛んでいると、商店街で不思議な力を感じて、近付いてマルシャを地上すれすれに振り落とした。
周囲に小さな騒ぎが起きる。

「あうっ!」

「な、な何だ!?」

「大丈夫なのかい!?」

「あわわわっ…だ、だ……だいじょぶです。」

おしりを撫でながら立ち上がり、マルシャは辺りを見回した。
一軒のお店が目にはいる。
アンティークショップみたいな、不思議なお店だった。
宝石店にも見えるそこに入ってみると古びた時計の針の音が聞こえてくる。
ちっく…たっく……ちっくたっく…ちっく………たっく。
壊れているのか。

「いらっしゃい。」

白髪で眼鏡のおじいさんが新聞を見ながら話し掛けた。
マルシャは固まった。

「……。」

「お嬢ちゃん、よくきたのー。その鏡に触れちゃいかんよ。この老いぼれじいさんの宝物なんじゃ。」

「宝…物?……きれーですー。でも、半分しかないです。」

「それはな、二つで一つだったんじゃが…大昔にとびっきりの美女が一つをわしにくれたんじゃよ。いつかまた出逢おうと言ってな。」

「おじいさん、まだ会えないのです?探さないの?」

「無理じゃよ。わしの身体はもう言うこときかん。彼女にも、鏡にも、悪いことをしてしまったのー……。」

「じゃあ、マルシャが手伝ってあげる。マルシャいろんなとこに行くです。もしも、これとおんなじの持ってるおばあさんが居たら、教えてあげるね。」

「お嬢ちゃん、ありがとう。そうだ、その鏡を一緒に連れていってはくれないかのう?こんな場所で埃をかぶっとったら可哀想じゃ。」

「おじいさん淋しくなる…。」

「鏡に世界を見せてやっとくれ。」

おじいさんはゆっくり歩みより、マルシャの首ににペンダント型の鏡をかけた。
にっこり笑ってよく似合うと言う。
それから、店じまいだと言われて追い出された。
キラキラ光の反射を見ていると、突然後ろから肩を叩かれる。

「何でオマエがこんなとこに居るんだ?」

「あ、カノンーw」

「寝てなくていいの?ごはん食べた?……あれ?マルシャ、その鏡はどうしたの?」

「ここのおじいさんから預かった!」

指を指した先には、廃墟。
確かにさっきまでいたはずのアンティークショップが、面影さえなくなっている。
ガラス戸を叩いたが返事はなく、人影も音もない。

「ちょっとお、大丈夫ぅ?」

「おじいさん、どこかいったのかなぁ。さっきまでいたんだよう!」

「怖ぇなオイwほれ、一緒に帰んぜw」

いったい、なにがおきたのか。
いったい何だったのか。

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