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魔法の傷
シアとカノンとアサトが同じ病院施設の部屋に並ぶ。
足を完全固定されたヒト、腹に包帯を巻き絶対安静のヒト、誰だかわからないくらい全身に包帯をぐるぐる巻きにされているヒト。
彼らの元にアルカディルがやってきた。

「幽霊病棟ですね。陛下が心配でたまらないみたいですよ。執務に支障が生じております。」

「陛下に言っといて欲しいことがある。俺を殺す気かってな。アストレイランドの奴らが来ることをわかって、俺らを動かしたのか?」

「…はい。ですが、想定外の事態が起きてしまったこと、相応の対応が取れず、不覚に思っております。本日は謝罪に伺いました。誠に申し訳ありませんでした。」

本当に謝罪だけで帰ってしまった。
もう裏がありそうで彼に恐怖すら覚えてしまう。

「アルカディルさんは〜、ニチカの力を分析していたよ〜。何かよからぬことを考えてるんじゃないかな〜。」

「そりゃあ気になるんじゃね?俺もタレイアの力には驚いたし。…怪我が治ったら情報収集でもしてみっかな。」

「………おまえら、立ち聞きしてないで、入ってきたらどうだ?」

静かにドアが開いた。
ニチカ、マルシャ、タレイアが恐る恐る病室に入ってくる。
お見舞いの品を持参して。

「カノン、お腹だいじょぶ?」

「あぁ。」

カノンの頬に手を当てて、そのマルシャの手を包み込む。
優しい笑顔を見せた。
なんだか雰囲気が違う。

「手当て、してあげる。…セイレーン!」

本を開いて召喚すると、心地よい音色がそれぞれの傷の癒しとなる。
心もほっこりする。
ニチカが切った果物を食べながら、優雅な午後を過ごした。

「最近怪我が多いわねぇ。今無傷なのはニッちゃんだけかぁ。」

「それって、俺だけなにもしてないみたいじゃん。まぁ…ずっとバジリスクにいたけどさ。」

「誰もそんなこと、思わないよぅ。ニチカはみんなを護ってくれた。ニチカいなかったら、全部めちゃくちゃになってたもん。ぴょん吉もタレイアもアサトも、みんな頑張ったよ。」

「…俺も、自分なりに頑張ったんだけどな。」

マルシャは軽く笑って、カノンの頭を優しく撫でた。
子供扱いや、優しさが照れ臭い様な嫌いな様な枯れは、その手を払う。
同時に腹の傷がもがいた。

「当分、身動きがとれないわねぇ…。グランゲールの動きが全くわからないしぃ。」

「あ、それなら俺が情報を…。」

「駄目だね〜。自分の身体は自分がよくわかるでしょ〜?」

「オメーも怪我したんか?」

「…。」

外傷はなんともない。
後に蝕んでいくだろう。
彼等の身体は…。

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