闇に包まれて 「カノン…マルシャ、あのヒトに対抗できる。でも、独りはだめ。マルシャの契約したヒト必要です。だからマルシャと契約して欲しいのです。」 本を開いた。 相変わらず真っ白な本。 契約は簡単で、主となるヒトの血を使い、本に名前を書いて貰うだけ。 お互いが信じ合っているならばサインは消えず、契約完了となるが、もしも信じ合っていなければ、彼は本の栄養になってしまうだろう。 「オマエ…何者なんだ?」 「【昔】から、カノンの事知ってる…と思う。ちゃんとした事、思い出せない。…カノン、契約して?マルシャ、この世界好き。みんな好き。まだ消えて欲しくない。」 「契約か…。俺もここは好きだし、オマエとはまだ一緒に生きたい。…いいだろう。本を貸せ。」 カノンは親指に噛みついた。 溢れ出てくる血を白紙に擦り付けて名前を書く。 ピッと書き終えると、不可解な映像が頭のなかを駆け巡るが、これが何なのかはよくわからない。 「不思議な本だよね。マルシャとヒトを繋ぐ道具…。……さ、カノン。一緒に全部護ろ。」 それから何が起きたのかはわからない。 バジリスクから見守っていた仲間は歴史を見ていた。 暗黒がアストレイランドを包み込み、やがてこちらにまで押し寄せてきて、バジリスクのシールドを展開。 もうだめだってくらい押されていた。 そんな中、タレイアは傷付いた身体で外に出て、倒れそうになりながら、バジリスクを光の力にも似た焔で護る。 アサトの支えがあったから立っていられたのだと思う。 中ではニチカが手動力と魂をリンクさせて、シールドを強化していた。 もしも強制切断された場合、魂は戻ってくることはないだろう。 変わってコンピューター操作をするのはシアだ。 得意というわけではない。 意識のない彼にああしろ、こうしろ、といわれている気がするだけ。 しかし、紅い子の力はこんなものではなかった。 シールドにひびが入り始めてしまう。 でも皆は諦めなかった。 希望を信じて戦い続ける。 信じる想いは力になって、タレイアの、ニチカの身体が大いに光り始めたではないか。 三つの光が空に吸い込まれ、空中で闇とぶつかり大爆発を起こした。 【前n】/【章n】/【次n】 |