憎悪 学園生活が定着し、友達も増え、それなりに楽しめる様になってきた。 授業を終えて、マルシャはずっと遠くの空を眺める。 生徒は1人…窓際の一番奥の彼だけ。 「…疲れたって顔だな。」 「そんなことない。楽しいです。」 「そ。」 鞄を持って立ち上がる。 その様子をガラス越しに見つめていた。 すると、教室のドアが慌ただしく開き、1人の男子生徒がマルシャに言った。 「マルシャ教官!大変なんです!クラスの奴が運動場で暴れてるんです!」 「止めなくちゃですー!カノン、行こ!」 「俺も…?」 場所を案内してもらった。 扉のまわりには人だかりができていて、奥へは進めない。 現状を付近の生徒に聞いたら、訳もわからず突然暴れだしたという。 何人か中にいて止めようとしているらしく、その行為は危険だとカノンは言い、何とか扉を開けた。 そこには何人か倒れていた。 「………マルシャ、誰でもいいが、できればアルカディルを連れてこい。」 「は、はーい!」 「返事は「はい」。」 「はいっ。」 剣を抜いたカノンの言う通り、教官室へ走る。 会議の真っ最中、勢いでドアを開けて、真っ正面に居たアルカディルに指をさした。 「今は立ち入り禁止ですよ。」 「カノンが呼んで来いってゆった!生徒、どがーんって!」 「落ち着きなさい。何かあったのですか?」 「うんどーじょーで、生徒暴れてて、けがしてるヒトいるの!」 ただの喧嘩ではなさそうだ。 会議を中断して、運動場に駆けつけると、金属音が飛び交っていた。 生徒からはとんでもない力を感じる気がする。 直ちに教員へ外を囲めと命令をし、運動場の扉を閉ざした。 「…っ、なんなんだよ。」 「何者かによって操られているのでしょう。カノン殿下、こんなもので苦戦する様ではまだまだですね。」 アルカディルは意図も簡単に、独自魔法で作り上げたキューブの中へと生徒を閉じ込めた。 「カノカノーっ!タレイアさんも手伝うわよぉw」 「…二人とも、無理はするな。マルシャは怪我人を運べ。」 「はーい。」 「りょおかぁいっw」 運動場を壊さない様に、呪われた彼に傷を付けない様に戦うのは、とても難しい。 挑発し、攻撃をガードするのが精一杯だった。 二人が戦ってくれている隙に怪我人を引きずって、運動場の外に運ぶ。 一人目をようやく外に運び出せたと思ったら、教職員に追われ走ってきた見ず知らずのローブを纏った男と目が合った。 途端に人質にされたマルシャ。 「ひやぁーうーっ!」 「動くな。全員この中に入ってもらおうか。」 運動場に、放課後の学園に残っていた職員、生徒全員を集める。 男は仲間と連絡を取り、直ぐに二人やってきた。 話を聞くと、アストレイランド出身のテロリストで、ステルメークを侵略しに来たという。 『ちょっとぉ、たった三人じゃなぁい?殺っちゃっていいんじゃないの?』 『……この中に洗脳されてる奴がいるかもしれない。むやみに動くな。』 『ぶーっ。』 カノンはわかっていた。 小さな通気孔から狙っている仲間と、2階の柱の裏に隠れる仲間の事を。 そして、それはアルカディルもわかっていて、即興の作戦を決行。 アルカディルがパンッと手を叩くと、両サイドがら銃弾が飛び放たれ、一つは敵の銃を弾き飛ばして拘束したのだが、もう一つは手から銃を落とすことが出来ず、とても危険な状態となった。 しかし、近くにいたカノンの護身術により、相手から凶器を奪い取る。 ボスはアサトにより気絶してマルシャは解放された。 一斉に避難する。 「流石ファノルアカシックです。…が、ニチカ。大勢のヒトの命が掛かっている時に失敗とは。」 「す…すみません。」 「まぁまぁ〜。俺が責任持って指導しますから〜。」 肩を落とすニチカ。 マルシャに頭を撫でられて、余計に落ち込んだ。 「俺思ったんだがよ、ファノルアカシックを部活動にしねーか?どうせ放課後は暇なんだし。」 「賛成ーっwねぇ、学園長さぁん。いいでしょお?」 「許可しましょう。顧問はマルシャ、あなたに任せます。後日、申請書を提出しなさい。」 犯人は連行された。 学園の秩序と風紀を守り、時には心の窓口ともなる部活動、つまりはなんでも屋として、今後活動することとなる。 アサトをリーダーとするファノルアカシック、明日から本格始動する予定だ。 【前n】/【章n】/【次n】 |