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星に届いた
月夜の外で虫が鳴いている。
蒸し暑い。
さっき眠りについたばかりだったが、部屋の物音に気付いたニチカは目を覚ました。
黒い影は近寄り、剥いだ布団を優しく腹に掛ける。
ペルセウスか…違う、シアだ。
タヌキ寝入りをした。
薄目で様子を見ると、彼は椅子に座り、タバコを吹かし始める。
どおりで最近独特な煙臭がすると思った。

(何やってんのさ…。てか嫌がらせかっての!)

嫌がらせは時間を置いてやって来た。
そして5回目。
いい加減ウザい。

「ねぇ……さっきから何なのさ?眠れないんですけど…。」

「…。」

シアはタバコに火を着けた。
煙を吸って一気に吐き出す。
ニチカは上半身を起こし、窓越しに見える星を覗いた。

「………星空w…綺麗。」

「…。」

「ねぇ…教えてよ。シアさんは…どうしたいのさ?」

「……俺〜…?」

吸い始めたばかりの火をグリッと消して、ベットに座る。
力強く腕を掴み、押さえつけるように寝かせた。
付き人時代から、言い寄る目的はわかっていた。
シアはニチカの力を研究し、ステルメークの軍事用兵器として変換する事を考えている。
出来れば、掃除中のハプニングではなく、本人の口から伝えて欲しかった。
都合の悪い事はいつだって雰囲気で流してしまう。

「シアさん……離…やめろ!!」

「…ニチカ。」

「ズルいよ…。俺にばっかり言わせてさ。都合が悪くなるとはぐらかしてさ…。身体じゃなくて、言葉が欲しい。…シアさん、思ってる事、俺に教えてよ。」

大きな甘えん坊。
埋もれる感じで強く抱き締め、想いを語る。
シアの頭に優しく手を置いた。

「ニチカの本気に勝てる程、俺は強くないから。ずっと前から感情に取り入ろうって企んで…酷いよね〜。…ごめんね。」

「うん…。」

「だから〜、俺にはこれからの事を決める資格なんてないんだ。」

「…それは俺にもないと思う。シアさん、今までの気持ち…ただの企み?“最期”まで全部計算してた?」

「違うんだ!」

温厚な彼が大きな声を出すとビビる。
その目は本気だった。
なんて優しい目なんだろう。
優し過ぎて見れない。

「生意気言いました。すみません…。」

「………ニチカ〜。」

「な…何さ?」

「もうわかってるだろ〜?……言わないと駄目〜?」

「駄目…wお願い、シア。…言って。」

真っ赤になったシア。
恥ずかしながらも、しっかりと想いを告白した。
未来も伝えた。
顔を隠すように胸に埋もれる彼を、強く抱きしめる。
あの日伝えられなかった言葉、今度はしっかり聞かせてやれた。

「意地悪だな〜…。」

「たまにはいいじゃんw…前にほっぺた殴ってごめん。痛かったっしょ。」

「泣きたくなった〜。」

「ごめんごめん…wねぇ、シアさん。」

「ん〜?」

「不束者ですけども…これからもよろしくお願いします。」

「…ニチカ……。……あ、あははw/////可愛いな〜wよろしくね。」




外傷ばかり気にしてたけど、既に、心は傷だらけだったんだね。
俺も辛かったんだ。
涙、凄く温かかった。
ありがとう。
もう一度、やり直そう。
『愛してるんだ。』
…誰よりも。




正直、何考えてるんだかさっぱりわかりませんでした。
淋しいっていうか、切なくて。
お芝居だったらよかったのに。
ごめんなさい。
まだ傍らで夢を見ていたいから。
『同じ気持ちです。』
…この先もずっと。

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