エル・ドラン
「………?」
生きてる?
目が覚めたニチカ。
自分の呼吸とは違って、一定の深さと早さで肺が膨らむ。
「自己管理くらいしっかりしろ〜。俺忙しいんだから〜。」
「シ…ア…さ……?」
「手の掛かる子だな〜。」
こんなの付けられてたら喋り難い。
呼吸器を捨て、管を引き抜いた。
身体を起こし立ち上がり、椅子に行儀悪く座るシアと同じ目線に立つ。
気持ちの伝え方?そんなのよくわからないし、この男には通じないと思う。
倒れそうになり、彼の肩を強く掴んだ。
「全然…平気だし。…世話…焼き過ぎ…でしょっ…。」
「へ〜。」
シアは机の上の書類を集めて、トントンと重ねた。
手を握り返さないまま、飲みかけのコーヒーを置いて出て行く。
駄目だ。
ここで引いたら後悔する。
ドアをやっと開けた。
「…っ…シア!」
「お〜?」
「あ…/////…ありが、と……。」
何も言ってくれなかった。
振り返りもしなかった。
けど、その背中はクスクスと笑っている。
ニチカはそれを見て安堵した。
まだ可能性はある。
素直になれない性格を治すのは難しいけれど、頑張ろう。
星と大地の関係、その前に彼らはヒトだ。
物語はどちらに転ぶのかがわかればいいのに。
ベット生活はいい加減飽きてきた。
エル・ドラン大陸に居ると時間が止まっている感覚になる。
彼の事しか頭にないから余計に。
「若いって素晴らしいね。」
「な、何ですか、突然!…ペルセウスさんだってまだ若いでしょ。」
「もうかれこれ…5000と……。」
「え?…えっと……今5000って言いました?」
「あー、確か5400歳だったと思うよ。ちなみに長老は25600歳位だったかな。」
「長生き……ですね…。」
「エルネキア族だからねw」
この惑星に住まう初めての人類、それがエルネキア族。
次にアネモイ族、アストラ族、最後に無力な人間。
歴史の目撃者である。
「俺、アストラ族だけどさ、人間とそんなに変わんないし…。」
「違うから種族の分類ができるんだよ。下界も恋愛の自由が認められてないのかい?ニチカ君、彼に想いが伝えられなくて悩んでるなら相談に…。」
「種族とかそういうのじゃないですから!……。」
愛を捨てて本気で殺そうとした事、未だに悔やむ。
頭の自殺痕が痛む度に思い出してしまう。
凄く泣きたい気持ちだ。
今日の夜は何だか冷える。
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