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大きなすれ違い
死人は痛みを感じないと言う。
なら、この頭の痛みは、生きている証なのだろう。
あのヒトが居ないなら、意味は全くないけれど…。

ニチカは包帯の巻かれた頭を押さえて起き上がった。
気付いた男は身体を支えてあげる。
ここはペルセウスの家。

「……ニチカ君…だよね?動かない方がいいよ。君はまだ再生できていないから。」

「……再…生?」

「みんな一応助かったんだ。マルシャに感謝してね。さすが我が弟wシア君を呼んでくるよ。」

シアが生きてる。
その事実が物凄い嬉しくて、安心の笑みを零した。
また「愛してる」が聞けるから。
ペルセウスは中庭に居るシアを呼んだ。
ゆっくり急いで来る。

「「…。」」

「…ごゆっくり。ふたり共、無理はしないように。」

邪魔者は退散する。
第一声に戸惑った。
こういう時は皮肉で責めてしまう。

「…ニチカもしぶといね〜。」

「何言ってんのさ。シア程じゃなっ…っ!」

「ほら〜。大人しくしなきゃ〜。」

ゆっくり寝かせられたが、ニチカはその腕を払いのけた。
深く考え過ぎて、素直じゃないから…素直になれなくて。
許せないなら忘れた事にすればいい。
だけど、彼との事はひとつも忘れたくないんだ。
反射的に側を離れられる。

「……ごめん。上手く言えないけど、嫌いとか、そんなのじゃないから。…気にしないで。」

「…怒ってる〜。」

「違うって。…多分。」

「…謝って済む問題じゃないよね〜。」

来る。
ニチカが最も嫌う言葉が。

「これからのこと、ニチカに“任せる”。」

下唇を噛み締めた。
やっぱり自分は怒ってるんだと思う。
言葉で逃げる彼に。

「…いつも……。」

「ニチカ?」

頭にきて、咄嗟に手が出てしまった。
乾いた音が頬を赤く色付ける。
シアは出口を向く。

「いつもそう…だよね。いつも俺に任せてさ…。こっちは、もっとアンタの…こと、が知りたくて話してんのにさ、…っ、“任せる”なんて言われたら…結局は俺の意見じゃん。」

「何でも思い通〜りなのに不満なのかい?」

「違う!…うぅっ。…俺は、もっとシアの言葉が聞きたいだけ。」

「………ごめんね、ニチカ。」

そう言うと、シアは部屋を出て行った。
殴るつもりはなかったのに。
途方に暮れた。
しばらく経ってもふたりは会わない。
治療中だが一度も見舞いに来てくれることはなかった。

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あきゅろす。
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