▲気紛れな一時 肩から溢れる血液が、タレイアの頬にボタボタと落ちる。 が、違う液体によって薄まった。 「…おw命乞いすんのか?」 「ち…違うわよぉ…!」 「まさか怖ーのか?安心しろって。女の泣き叫ぶ姿、大好物だからよーw」 「…違うったらぁ………。ワタシ達って…戦わなきゃ…いけなかったのぉ?……もっと他に、マルシャちゃんを助ける方法はあったのに……。どうして冷静に判断出来なかったのかなぁ…。」 「…知らねーよ。」 アサトはタレイアの首にクナイを撫でつけた。 冷静に考えれば、戦う必要なんてなかった。 だが、ワタシ達はそれを望み、選んだ。 運命には逆らえない。 身を持って教わる。 「ねぇアサト…。」 「んあ?」 「キス……してぇ?」 「…綺麗な死に様描きやがる。」 血を強く拭き取った。 柔らかい頬に傷を作るぐらいに。 戦いはまだ終わっていない。 しかし、アサトは目の前の敵に女を感じた。 見下して唇を…。 「………んふw」 重なった唇は静かに笑みを浮かべた。 感づいた時にはもう遅い。 背後に炎の槍が創られ、炎の槍は左胸を、右胸を貫き、地面を焦がした。 「…テメー………謀っ…な…。」 「ご……めん……な……いねん…。」 「…負け…た、……なw」 隣にうつ伏せになって倒れる。 じわじわと痛く、苦しかった。 さっきまで上がっていた息の音は、ゆっくりと深く小さな音に変わるタレイア。 歯を食いしばってる。 赤い湖が2つ、混じり合う。 やがて黒ずむ真っ赤な湖。 「………っ。」 「……苦し…な。……うっ!」 「っ………サ……っ。」 見たこともない女らしさ。 綺麗だった。 最期の力でアサトを求めるタレイアの細い指先。 呆れて答えた。 もはや指を絡めるなんて器用な事は出来なく、歪に握る。 温かさはよくわからない。 だが確かに、その手には確かに優しさがあった。 彼女は綺麗に笑って、先に逝く。 ただ眠っているだけのような、安らかな顔だ。 男は涙を堪えた。 忍びとして失格だという恥じらいと、実は密かに愛していた者を失ってしまう悲しみと、運命の皮肉さ。 全てが悔しくて。 「おい……女狐。…本当…悪りぃ。痛かっ……ろ?………おめーは……天国逝きか?………俺はっ…地獄だw……………もし…居たら、おめーだけ…天国、行かしてやらーw……だからよ………………そのまんま…笑っと……け………。」 そして、後は追わずに男も地に堕ちる。 【前n】/【章n】/【次n】 |