ここから変わる 連合区域の民家の屋根を直す仲間を見つけた。 手を振ると気付く。 作戦が始まった。 マルシャは下りてきたカノンにランチボックスを差し出す。 軽く返事をして受け取ってくれた。 「 w」 「……。」 「 ?」 「……。」 「……。」 音にならない。 ランチボックスを開こうともしなかった。 缶コーヒーばかり飲む。 カノンの服を引っ張った。 「ん?」 「 ?」 「……何?」 「 !」 「……はー…。」 諦めた様なため息。 嫌いだ。 大嫌いだ。 せっかく頑張っているのに、成果はいつもこんな感じ。 話しかけるなと言わんばかりの、抜けた呼吸。 伝えようと必死な自分が馬鹿らしかった。 マルシャは静かに立ち上がり、ひとり帰り道を歩き出す。 「マルシャ!」 「……!?」 カノンが追い掛けて来た。 悪戯に逃げてみたがすぐに捕まってしまい、か弱く笑う。 「帰る。」 「?」 「家に。」 引っ張る力も握る握力も、とても強い、でも痛くない。 ちょっぴり楽しかった。ホームに帰ると、机の前に立たされる。 カノンはシアの部屋に無断で入り、何やら分厚い本を持ってきた。 「?」 「オマエの能力、思い出せ。」 マルシャは黒い表紙の古書を受け取り、適当なページを開いた。 すると白い閃光が解き放たれ、全身を包んだ。 一気に流れ込む莫大なデータ。 脳が破裂しそう。 頭を抱えて座り込むマルシャ。 (余計な記憶が戻らなければいいが…。) 《アタマ……割れちゃう…。》 「辛いか?…悪い。」 《痛いよう………。》 「ベットに連れて行ってやる。」 《……カノン?》 「ん?」 《マルシャの声、聞こえるのです?》 「あぁ。」 抱き上げてマルシャのベットに寝かせた。 ぐったりしている彼の隣に座り、優しく髪の毛を触る。 スルンと逃げられた。 「情けないよな……。結局本に頼ってしまった。」 《その本が欲しいです。何か…昔みたいな感じがする。》 「駄目だ。」 《どして…?》 「どうしても。今のオマエが好きだ。」 《……カノンとお話できるようになったからいっかー。》 わかった事、というより思い出した事がある。 自分はカノンよりも年上だ。 どのように改良されたかもわかった。 そして、声の出し方。 でも今はまだ秘密にしておく。 理由は…もちろん秘密。 マルシャはいつの間にか、眠りについていた。 【前n】/【章n】/【次n】 |