main 白白パニック(炎白/影白) 好きな人誰? そういわれて真っ先に浮かぶのは、レクター。 そう告げたらその人はなんだか困ったように笑って、そうじゃなくて、と俺を引き寄せた。 「恋愛……………こういう意味だよ」 へ、と間抜けな声を出す俺にその人はキスをして囁いた。 「ローグじゃなくてさ、俺じゃダメか?」 頬を掠めた桜色は、なんだかお日様の香りがした。 ……………………………………… …はい、ここまで俺の妄想な! 「スティング…大丈夫?なんだか、その…思考があの世に行った気が…」 「大丈夫!大丈夫っすよ、ルーシィさん!ちょっと現実逃避しただけっすから!」 「それ…大丈夫なの…?」 …そう、現実逃避。何故俺が思考だけあの世へいく羽目になったかというと、話せば長い。だが、状況を見てもらえばわかると思う。…ローグとナツさんが…。 「いい加減諦めろ、ナツ・ドラグニル!」 「はっ!やだね!お前こそ諦めろ!」 「諦めろ…だと…?俺はスティングの相棒だ。何故俺がスティングの左を諦めねばならん…!」 「相棒がなんだよ!俺は公式スティングの好きなもの、だぜ?俺がスティングの左!」 …わかった?わかってくれた?…なんでこうなったかよくわからないけど俺は今、三角関係の真っ只中に放り込まれている。…最初は、ことの始めは俺もすごく嬉しかった。憧れのナツさんからの告白だったし、ローグも俺のこと好きでいてくれたのはホントにビックリした。 ……………だが、おかしい。おかしい点がふたつある。 まずひとつ、俺たちは男同士だということ(まぁどうせこれは問題から外れるんだろうけど…)。 ふたつめ。これが俺的一番重要だと思うんだが…………… 「なんで俺が二人の右側決定なの!?!?」 思わず口に出したが、皆様もお分かりいただけただろうか。 「なんでなの!?今の流行りって、憧れの人、ナツさんへの俺の下剋上!とか、ローグは…俺が守る!みたいなさ、俺is攻め!ってやつじゃないの!?」 俺のこの渾身の叫びに二人も届いたらしく、立ち止まってくれた…が。 「なにいってるんだスティング」 「お前は受けだろ」 「ちょ、スティング!?泣きながら崩れ落ちないで!?」 …俺もう立ち直れない…うぅ…。 ……………とまぁ俺がorzってなっている間にナツさんとローグは喧嘩を再開したらしい。二人の声が徐々に遠ざかっていった。 「…おいおい、大丈夫か、若マスターさんよ」 暫くうずくまって泣いていると、ぽんぽん、と肩を叩く誰か。 顔をあげるとそこにいたのは、グレイさんだった。 「グレイさんん…!」 「おう」 俺が見上げればグレイさんは苦笑を滲ませながら頭を撫でてきた。 「大変だな…三角関係」 「グレイさん!わかってくれるんだね!」 経験者なのだろうか、グレイさんの俺を見る目が慈愛に満ちている…! おもわず飛び付くと受け止めてくれた。 「なんか…デケェ犬みてーだな」 けらけらと笑うグレイさんと会話していると、ふと、周りが静かなことに気づく。 なんだろう、と周りを見てみれば、そこにいたのは… 「……………!…ぐっ、グレイさん…」 「ん?……………って、あれ…!」 …なんかよくわからないが禍々しいオーラを纏い、殺気だっているナツさんとローグ。 ……………そういえば俺、グレイさんに抱きついて…………… 「グレイさん逃げて!」 「言われなくても!」 「逃がすかこの変態氷ヤロー!!」 「スティングに気安く触れるな変態…!」 「ナツさんとローグ息ピッタリ!仲良いね!」 「「よくない(よくねぇ)」」 「そんな風に言われても説得力ないね!」 なんとか時間を稼ぎグレイさんを逃がす。 「チッ……………逃がしたかあの変態…!」 「……………次会うときは逃がさん」 「ふぅ、ひと安心だな……………って、ん?」 すると今度は何を思ったか二人は俺に向き直った。 あっ…と嫌な予感がよぎったと同時にナツさんとローグに両サイドを挟まれ、二人がピタリ、とくっついてくる。 「なぁスティング」 「…選べ」 「はいぃ!?」 あ、もう俺終わった… そんな不吉な宣告が頭に浮かんだそのとき、ダァン!となにかが登場した音(?)が響いた。 恐る恐るそちらを見てみれば… 「スティングくん!助けに来ましたよ!」 「ナツ…何をやっている…」 「こんなローグ…記憶にないね」 「れっ…れっ…レクタぁぁぁぁあああ!!!!」 扉の前に立つのはエルザさんにルーファス、そして最愛のレクター…!俺は二人を振り払うと、レクターへと駆け寄った。 「スティングくん!」 「レクター!ああっ!」 急いでレクターを抱き上げ、ルーファスの後ろに隠れて向こうを覗きこむ。 「げ……………エルザ」 「ルーファス……………何故ここに」 「お前たちがなにやら騒ぎを起こしていると聞いてな 」 「迎えにきたしだいだよ」 その言葉に凍りつく二人。 「さて……………騒ぎを起こした責任は償ってもらおう!」 エルザさんが1歩踏み込んだかと思った一瞬、二人はギルドの天井を突き抜け彼方へと消えていった。 「「「……………」」」 静まり返るギルドに満足そうなエルザさんの吐息が響く。 「……………ルーファス、ローグとナツさんがどこら辺飛んでったかわかる?」 「……………辛うじて、記憶しているよ」 俺とルーファスは顔を見合わせると同時にため息をついた。 …………………………………………………… (スティング…探すのはいいがあまり近寄らないでほしいものだね) (え!?なんでだよ!!) (……………まだ死にたくないからね) (……………おう) [*前へ][次へ#] [戻る] |