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恋愛対象とか聞いてない! (炎白)
大魔闘演武が終わって1週間が経過しようとしていた。居心地のよいギルドでいつものように本を読んでいたルーシィはふと、違和感を感じて顔を上げた。
そこには彼女のチームの桜髪のパートナーと何やら話している見慣れない金髪。
「エルザー、あれ誰?」
「誰って…スティングじゃないか、剣咬の」
そういわれてハッとする。そういえばあの顔、見たことのある顔だ。むしろ、今では割りと仲良くなった方の。
「…あ、そういえばナツが遊びに来るってはしゃいでたなぁ…」
一人呟いて見てみればなかなかに楽しそうな雰囲気じゃないか。ルーシィは話に加わろうと声をかけた。
「いらっしゃい、スティング」
「あ!ルーシィさん!こんにちは」
すぐに金髪…スティングが振り返る。人懐っこそうな笑顔を浮かべている辺り、初めてあったあのときの見下したような態度がまるで嘘のようだ。
「遊びに来たのね」
「まぁ、ナツさんに来い、って言われちゃいましたからね。断れねーっすわ」
ころころと表情がかわる辺り、ナツそっくりだなーとルーシィは考えながら話をする。
「そういえばあんた、ギルドマスターになったのよね?仕事忙しくない?」
「あー…結構。今日のこれのために1週間詰めに詰めましたから」
「そんなにナツに会いたかった?」
「ええ、憧れの人ですし」
そう無邪気に笑うスティングにルーシィもつられて頬を緩めたその時。
「おい……………ルーシィ」
明らかに不機嫌なナツの声。そして隣にいたスティングの肩に手をまわすと、ぐいっと引き寄せた。
「スティング、とるなよなー」
「は、はぁ?」
ナツの突拍子もない発言と行動に、ルーシィが固まる。スティングも突然のことに、ぽかん、としている。
「スティング、俺のだから」
引き寄せたスティングの頭に顎をのせながら、当たり前のように言い放つナツに、ルーシィの頭は追い付かない。
(え、待ってよ!それってナツ…ええ!?)
困惑するルーシィを横目に、ナツは愛しそうにスティングの頭を撫でている。
「ルーシィにはとられたくねぇな」
「どっ、どういう意味よそれ!」
「そのまんま」
「はぁぁ!?」
「や、ちょっとナツさんにルーシィさん!待って!?」
暫くして思考が追い付いたのか、スティングが顔を真っ赤にしながら喚いてきた。
「どういう意味ですか!?てかナツさんこれ恥ずかしいです!」
必死に抵抗するスティングにナツは一言、
「どういう意味って、俺はスティングが好きだって意味だぞ?」
と、あっけらかんと告げた。
「「えええええ!?!?」」
明らかに慌てる金髪二人。しかしナツはそんなこと気にしてないように続ける。
「勿論、恋愛だから」
途端、ギルドがシン…と静まり返る。だがそれも一瞬、ギルドはすぐに喧騒に包まれた。至るところで皆口々に喋っている。
「あのナツが…」「聞いたか、恋愛だとよ!」「ナツにも恋愛感情なんてあったのか…!」
「そっちかい!!!!!!!」
ルーシィのツッコミもむなしく、ギルドは勝手にお祝いムードに向かって行く。そんななか、完全に置いてきぼりを食らったスティングは……………
……………顔を真っ赤にし、小刻みに震えていた。
可哀想に…とルーシィが思ったのも束の間、スティングは勢いよくナツを振り払うと立ち上がった。
「えと、あの、その、ナツさん…ってか皆さん俺仕事あるんでここで失礼します!!!!」
「え?おい、スティングーーー」
ナツが呼び止めるのも無視して飛び出していくスティング。
そんな後ろ姿を眺めながらルーシィは一人、(面倒なことになりそうだ…)と頭を抱えた。
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