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Novel
★06*08前提08*06【リバ酒】
琥太郎がいればどんなご都合設定でもいけるんじゃねーかと思ってきてしまっています。
…科学者じゃないんだぞ…科学者じゃ……ブツブツ←自己ツッコミ

大概ギャグです。



















「陽日せんせ………はぁ」


直獅に呼ばれたので部屋に来て見れば、彼は既に酔っ払ってしまったのか、さも気持ち良さそうに眠っていた。人を呼び出しておきながら寝るなんてね、と肩を竦め、郁は取り敢えず酒瓶やコップを片付けようとローテーブルに近付き腰を屈める。


「ん?」


普段なら何本かの空き缶や瓶と一緒に直獅自身も転がっているのだが、今日はたった一本の酒瓶が置いてあるだけだった。しかも瓶の中身は殆ど減っておらず、直獅が飲んでいたであろうコップには半分以上酒が残っている。直獅がたったの一杯も飲みきれないまま酔い潰れるなど考えづらく、郁は訝しんでコップを持ち上げた。アルコールの匂いは特にキツいわけでもなく、むしろ美味そうに鼻腔をくすぐる。
捨てるのもなんだし、頂きますよ陽日先生。


「…ん、普通のお酒だな……。なんでこんなので寝たんだろ」


取り敢えずコップを流しへと運び、寝ている直獅をどうにかしようと部屋に戻る。とそこで、郁は今し方自分が飲んだ酒瓶の側面に貼られているラベルに目が留まった。"リバ酒"と見慣れない名称も勿論妙なのだが、郁が目を見開いたのは"説明"と書かれている欄に琥太郎の名前を見付けたからだ。


「は…!?」


慌てて瓶を掴み、その文章を読む。


『夜久がCPをひっくり返す秘薬とか作れませんか、と可愛くおねだりしてきたから作ってみた。後悔はしていない。CPがひっくり返るとはどういう状態かよく分からないが、取り敢えず郁と直獅の二人で飲んでみろ。死にはしない(はずだ)から安心していいぞ。飲んで5分後くらいに眠くなるだろうが、起きたらきっと"ひっくり返"っている。…と思う。後でどうだったか報告しろよ?
星月』


「何してんの琥太にぃ。………ていうか飲んじゃったけど!?…最っ悪……」


成る程、だから陽日先生は寝てたのか。…はっ!この説明通りだったら、このままじゃ僕まで…!


「…っ、まずい………」


飲んでからそろそろ5分が経とうとしているのか、郁は突然襲ってきた眠気に額を押さえた。ぐらりと視界が揺らぐのを堪え酒瓶をテーブルに戻すと、いよいよ意識が遠退いていく。


「僕とした事が…っ、浅はか…だっ、た………」


膝が折れ、床に腰をつく。郁はそこで強い眠気に負けてしまい、そのまま床に倒れた。



















先に目を覚ましたのは直獅である。琥太郎に貰った酒を飲んだら眠ってしまい、気付いたら目の前で郁が倒れているのだから驚いた。酒瓶に書いてある説明を全く読んでいなかった直獅は、今自分が彼に抱いている感情の意味がわからなかった。


「水嶋…?」


たまに、酒に付き合わせて郁を酔い潰す事はある。時に自分の方が先に気が付き郁の寝顔を盗み見ては胸を高鳴らせていたのだが、それはあくまで「綺麗だな」という感嘆や自分しか知らない郁の表情を知っているというじんわりと満たされるような温かさだった。状況は同じだというのに、…どうしてこんなにも熱く滾るような劣情が生まれるのだろうか?
服を脱がせて、酒で弛緩した身体を目茶苦茶にしたい。噛み付いて、ぐちゃぐちゃに犯したい…!
郁に対して抱いた事のない感情が溢れ、直獅の神経の一本一本に浸透していく。衝動に支配された神経は直獅の身体を動かすと、横向きに眠っていた郁を仰向けにさせた。


「…ん………」


小さな吐息を漏らすだけで、郁が起きる気配はない。


「隙だらけじゃ食われっちまうぞ?水嶋…」


直獅は郁の髪をそっと撫でると、その手を滑らせワイシャツに手をかけた。ループタイを抜き取りボタンを外してしまうと、ワイシャツを開き胸元を露わにする。細身ながら筋肉の付いた身体はいつも見上げるばかりで、見下ろす事など自分が郁の上で犯される時くらいだ。直獅はその身体にうっとりと溜息を漏らすと、手の平でその肌を撫でた。


「あー…やばい……、…なんだコレ………」


撫でる度に自分の心拍数が上がる。身体を屈め、ちゅ…と軽く首筋にキスをすると、郁は僅かに身じろいだ。その反応が可愛らしく、直獅は軽いキスをしながら胸元まで下りていくと、興味本位で乳首にそっと吸い付いてみた。


「っ、ぅ……」


「え…?」


ぴく、と郁の眉根が寄せられ、しかしまた静かな寝息を立てる。普段ならば少し触れたくらいでは反応しないというのに、今は眠っていながらも軽いキスで反応を示したのだ。それに驚くと共に、直獅の心が騒ぐ。


「可愛い…」


舌先でぐにぐにと押し潰し、普段喘がされていた唇で乳首を吸う。自分の唾液に濡れたそこを嬲っていると真下の心臓が速くなるのが、頭上から小さく声が漏れてくるのが堪らない。直獅は左胸にも手を伸ばし、指先で乳首を撫でた。


「ぁ…、……っん…」


再び眉間にしわが寄せられ、唇が僅かに開く。そして直獅が指と舌とで同時に胸を愛撫すると、郁はハッとしたように突然目を覚まし、思わず声を上げた。


「な…ッ!は、陽日先生!?」


違和感に目を覚ました郁は、自分の上に直獅が乗っているというのだから驚いた。はだけられたワイシャツと、いつもと違う様子の直獅に戸惑う。


「……水嶋…、もっと寝ぼけた感じで起きられないのかよ。いきなり覚醒してたらロマンが無いだろー?」


「そういうのは漫画の中で楽しんで下さい。
……じゃなくて、何してるんですか!?」


「お前を襲ってる」


「はあぁ!?」


直獅はさらりと答え、上半身を起こそうとする郁の肩を押さえ付けると、驚いた表情で固まる彼に妖しく口角を上げた。初めて見る表情に、郁は思わず抵抗の手を止めてしまう。表情だけで腰が甘く痺れ、だがそれをごまかすように郁は直獅を睨みつけた。


「うわ、その表情ヤバい…」


「っ、陽日先生…本当に変だって…!」


「変なのは、お前もだろ…?」


普段ならば、直獅が上に乗ってくればすぐに組み敷き自分の手で彼を乱す事ができるだろう。しかし今は、眠っている間にじわじわと高められた熱のせいか、直獅にまた触られる事を意識のどこかで望んでしまっていた。返す言葉が見付からず郁が奥歯を噛むと、直獅は満足げに郁に覆いかぶさり、唇と唇が触れ合いそうな距離に近付く。若干赤みが差した頬に触れ、その指で髪の毛に隠れた耳を撫でると、郁はクッと唇を噛んだ。


「っん!……陽日…先生…っ」


「水嶋…」


「待っ、…!せんせ、…ぅ、んん…!」


直獅の指が耳をくすぐり、ぞくぞくとした感覚に声を震わせる。引きはがそうと直獅の腕を掴むが力を入れるよりも先に彼に口付けられてしまい、郁は思わず瞳を閉じてしまった。驚いたとは言え、普段はキスをされる程度で"思わず"目をつむってしまう郁ではなく、自分自身の反応にすらも動揺させられる。
名前を呼ぼうと開かれた唇に、直獅は熱い舌を捩込む。それだけでぎゅっと目を閉じた郁が愛おしく、直獅は郁の舌をゆっくりと撫でた。


「ん、ん…っ あっ……」


擦れ合う舌と、耳をくすぐる指が、郁に未知の感覚を送り込む。普段と逆の立場だというのに、愛される行為に心と身体が熱をもって郁を焦がす。


「はぁっ、ぁ……はるき…先生…」


「…なんだよ、そんな顔しやがって………」


「……っ、…」


耳から離れた小さな手が、郁の頭をそっと撫でる。直獅を引きはがそうとしていた手はいつの間にか求める様に力が込められており、郁は頭を撫でられる事すら切なく、もっと直獅に触れて欲しくて堪らなかった。


「言ってみろよ。…どうして欲しい?」


「…ぅ、………」


「ほら、言わないと悪戯するぞー」


そう言って笑うと、直獅は細い首筋に唇を寄せ、郁の白い肌にちゅう、と吸い付いた。短く高い声を漏らした郁に満足したのか直獅は何度もそこに唇を落とし、指先を胸へと這わせ乳首を指先でぴん、と弾く。


「ひっ、ぁ…!」


「こうされると気持ちいいだろ?」


「っんん!はっ、あ…や、それ……それ変…っ、くぅぅっ」


人差し指と親指とで硬くなった乳首を摘み、ぐに、と優しく押し潰す。乳首を捏ねくりまわすと郁は切なげに膝をすり合わせ、下唇を噛みなんとか声を漏らすまいとした。だが白くなる唇に気付いた直獅が頬に軽いキスをすると、郁は潤んだ瞳で物欲しげに彼を見上げる。年下らしい素直な目に、直獅は生唾を呑んだ。


「ぁっ、……陽日先生…、……こっちも、…触ってください…」


直獅の手を取り、自分の下半身へと導く。郁は益々顔を赤くするが、窮屈そうに生地を押し上げるそこに直獅の手が触れると、腰が勝手に揺れてしまう。


「ふっ、ぁ…あ……ッ」


「可愛いなぁ、水嶋…。俺の手……好きか?」


「っ、う、んん…!は、い………陽日…せん、せぇ…っ」


直接、触って下さい…。
…と、その時。熱に浮されたまま口にしようとした言葉をはたと飲み込み、郁は現在の自分の状況を見てピシリと音がしそうな程に硬直した。


「………な……っ!?」


「水嶋?どうかし……………、…あれ!?」


同時に、直獅までもが呆けた声を出して固まる。酔いが覚めるのと同じように、どうやら酒の効果により逆転していたものが戻ってしまったようだった。


「…陽日先生」


「……おう」


「……、…なんで僕を襲ってるんですか!!?有り得ないでしょう!」


「おぉぉぉ俺が聞きてぇよ!ていうかなんでお前はすんなりさぁ…!」


「止めて下さい聞きたくないです!………あぁ…なんでこんな事に…ッ」


まるで今までの事が夢だったかとように慌てだす二人。ムードもなにも無くなってしまい、郁と直獅はわけもわからないままに言い争いを始めるのだった。



















「……で。どういう事か説明してくれる?」


翌日、二人はあの酒瓶を持って保健室を訪れた。言い争いの最中に酒の存在を思い出した郁が、原因は琥太郎にあるに違いないと踏んだのだ。勢いよく机に置かれた瓶と郁の顔を交互に見、琥太郎はどこか満足げに口を開いた。


「その様子だと成功したみたいだな」


「な・に・が?」


「琥太郎センセ…その説明文読んだけど、意味わかんなくてさ…。説明してくれよ…」


直獅に襲われた事が余程悔しかったのか、恥ずかしかったのか…珍しく憤る郁と、これまた珍しくげんなりとした直獅。琥太郎は"リバ酒"の効果をもう一度説明すると、「まだ効果が持続する時間は短いみたいだな」と呟いた。


「…は?ちょっと…まさかまた改良するわけじゃないよね、琥太にぃ…」


「んー?折角面白いものが見れそうだしなぁ。お前達が"ひっくり返る"時間が長ければ、直獅が郁に突っ…」


「うぎゃー!琥太郎センセ!それ以上は言うなああああーっ!!」


もう琥太にぃから何も貰わないで下さいよ、と郁が直獅に釘を刺す傍ら、琥太郎は「次は酒以外にするか」と楽しげに目論むのであった。
















end














2012.9.25

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あきゅろす。
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