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Novel
★05*04【↓の番外編】
錫一誘拐監禁の番外編
俺自身が前作の続き(主にえろ)が気になるという意味不明の状態に陥っていたら、「続き書かないの?」という声を頂き…\(^P^)/
でも、最初は続きは書かない予定でした。なぜなら…、俺はハッピーエンドが見たいんです!ハッピーエンド大好きです!…しかし、錫也がいる限りハッピーエンドは訪れない…。そしてそこで気付きました。だったら、錫也を逮捕して満足するしかねぇ!と←



というわけで、「もしも錫也が逮捕されたら」という話です←
その、えろシーンのみ!


(錫也はもう一回一樹を誘拐するけど、その時にヘマして捕まったと仮定)























『シたい』


そう一樹が言ったのは、二度目の誘拐から一ヶ月経った頃だった。誉は最初、断ろうとした。心の傷はそう容易く癒えるものではない。ましてや二度も誘拐され、凌辱の限りを尽くされたというのでは自分が手を出すのは酷く憚られる。しかし一樹は、「もう昔の話だろ。大丈夫だよ」と笑った。


「一樹…嫌だったらすぐに言ってね?」


「……あぁ」


「電気は…」


「点けたままがいい。」


お前に抱かれてんだ、って…ちゃんと分かるからさ。
大丈夫だと言いながらも一樹は緊張に強張っており、性交目的の男が目の前にいる、という状況だけで冷や汗が出る。相手が誉なのに、言うことを聞かない身体に腹が立った。
もう隠しカメラも盗聴器もついていない一樹の部屋。誰の目も届かないベッドは、二人分の重さに軋む。自分の下で唇を噛む一樹の髪を、誉はそっと撫でた。


「一樹……平気?」


「…っ、平気だ……」


髪を撫でただけで身体を固くする恋人を前にして、誉は心底誘拐犯が憎くなる。自分達の関係を壊そうとする目的で一樹を誘拐するなんて、卑怯で、汚いやり方だと。髪を撫でていた手をゆっくり頬へと滑らせ、戦慄く唇を指先でなぞる。


「キス…いい、かな」


「…ん。」


「ごめんね…守れなくて…」


「お前が謝る事じゃ…っ、ん……ん、ぅ…」


顔を傾け、きつく噛んで歯形が付いてしまった唇に優しく口付ける。思わず目をつむってしまった一樹だが、そうすると誉の姿が見えなくなり言いようのない恐怖感に襲われてしまう。自分を押し倒しているのは錫也ではなく誉だと分かっているのに、刷り込まれた恐怖は一樹の身体を震わせた。


「はっ、ぁ………ッ、く…」


「目を閉じないで。一樹にキスしてるのは僕なんだって、ちゃんと確かめて……」


「……誉…、ん…っ」


「んっ…、かずき……」


背に腕を回し、服を握り締めて必死にキスに応えようとする一樹が愛おしい。不安げにうっすらと瞼を上げる一樹の健気な姿がたまらず、誉は欲望のままに舌を捩込みたくなった。しかしそんな事をして怯えさせてしまっては意味がない。誉はグッと堪え、薄く開かれた唇を吸い、頬にキスをしながら確認した。


「っ、一樹……もっと…キス、したい」


「………俺…も…」


「…ありがとう」


一樹は小さく頷く。自分に合わせてくれる誉に申し訳なく思うと共に、キス一つでも少しずつ進めてくれる事がとても嬉しかった。
見つめ合い、もう一度唇を重ねる。一樹が薄く唇を開くと、誉はそっと舌を差し入れた。


「ふっ、ぅん……ん…っ」


誘拐され、戻ってきてから…二人は一切キスをしていなかった。誉が遠慮していたのもあるが何より、一樹が頑なに拒絶していたからだ。錫也に酷く犯され、自分は汚れているんだという思いに囚われてしまい、一樹は誉が自分に触れる事すら段々と申し訳なくなっていった。空回りした遠慮会釈に対し誉が「そんなことないよ」と伝えても、そう簡単に納得できる程浅い傷ではない。だからこそ、一樹から誘われた時に誉は断ろうとした。付き合っているからと必ずやらなければならないものでも、無理をするものでもないからだ。
しかし一樹は誉とキスを重ねながら、誘ってよかったと感じていた。キスだけでこんなにも癒され…何より、こんなにも身体が熱くなるなど一樹は知らなかった。錫也にキスをされ、嫌悪に舌を噛んでやった事もある。だが誉とのキスは、もっともっとと無意識に相手を求めてしまうものだった。


「っあ……、ん…んんっ」


悔しいが、錫也に調教された身体はすぐに我慢が出来なくなり、一樹は誉の背に回していた腕を解く。そして右手で自分の胸に触れると、服の上から分かる程に硬くなった乳首を指で弄った。舌が触れ合うと腰が甘く痺れ、一樹はなんとかごまかそうと膝をすり合わせるが、誉はすぐに気が付く。顔を離し、唾液に濡れた唇を舐める。


「ふふ…一樹、可愛いね…」


「悪い…、俺……っ」


「いいんだよ、一樹は悪くない。……次は、僕が一樹を染めればいいだけなんだから」


「…ッ!ほま、れ…」


「想像しちゃった…?」


首筋に唇を這わせ、ぺろりと舐める。ひっ、と一樹は鳴くが、その音に恐怖の色はなかった。


「誉…っ、ぅ、あ……あっ…」


「ん…綺麗だよ、一樹……」


一樹の右手に指を絡め、ベッドにそっと押し付ける。首に小さくキスを落とすと一樹は手を握り返してきたが、その力の弱さに誉は心が痛んだ。当然だが、一樹はこのように愛された経験がまるでなかったのだ。手を握り、愛を確かめ合いながらなど、錫也がやるはずもない。誉はそんな一樹の手を強く握り、相手を求めていいのだと言葉でなく態度で伝える。


「……誉…」


一樹の緊張はそれで大分軽減したようで、幾分柔らかくなった笑みを浮かべた。そしてゆっくりと目を閉じると、数回深呼吸した。


「目……」


「あー…、なんか………大丈夫っぽい。
アイツ、……アイツが俺をこんな風に扱うわけがねぇんだよ。目ぇ閉じてても、俺を抱いてんのはお前だって…やっとわかったから…。
だから、大丈夫だ。」


「一樹……、…」


そう言うと、一樹はパチリと目を開け「まぁ、姿見えた方が安心するけどな」とニカッと笑う。それに釣られて誉も笑うと、「そうだね」と返した。



ゆっくり、ゆっくりとお互いを確かめ合うように熱を溶かす。深くキスをしていると、その最中に一樹が自分のベルトへと手を伸ばしたので誉は目を見開いた。これも、錫也に教え込まれた事なのだろうか…と心が陰る。誉が唇を離すと、一樹は少し物足りなさそうに吐息を吐いた。そして誉の手を取ると猛った自身をスラックスの生地越しに撫でさせ、甘えるような声を出す。


「あっ…ん、……誉…、触って…」


「もう、一樹ったら…。そんな風に誘われたら…我慢できないじゃないか」


錫也の調教による行動だとしても、普段気丈に振る舞う一樹のこのような姿に興奮を抑えられる筈がなく、誉は手の平から感じる熱に更に高ぶった。下着ごと脱がせてしまい、求められるままに陰茎に触れる。数回扱くうちにそこは完全に勃ち上がり、だらだらと先走りを垂らしていやらしく濡れていった。


「ふっ、ぁ…あっ……ほま、れ…!んん…ッ」


「くちゅくちゅいって、凄くえっちだね…。一樹…気持ちいいの…?」


「ひぁっ!や、ぁ……誉の指…ッ、んん…ぐちゅぐちゅって…きも、ち…ぃ…っ、ぅあ!あ、ん…」


とろんと蕩けた瞳は誉だけを映しているはずなのに、指を口に含む仕草や易々と卑猥な言葉を吐く事に違和感を覚える。誉の知る一樹は、そんな事を自然にできるような人物ではない。
やっぱり……そうか…。
誉は感じていた違和感の原因を悟り、悲しげに眉を下げる。錫也に調教された身体は勝手に動いてしまうのだ…男を喜ばせるように。


「一樹…」


そんな事しないで。
…と、言ってしまいそうになる。分かっている…一樹が望んでやっているわけではない事なんて。しかしそうしなければ一樹に暴行を加えるような相手は、もういないのだ。にもかかわらず一樹が無意識にこのような行動を取ってしまうのは、相手が誉といえどやはりどこかに"男"に対する恐怖が残っているからだろう。一見すると怯弱になっているとは分かりかねるが、誉にはその姿がとても痛々しく見える。だからこそ、そんな事しないで、と言いたいのだ。だが一樹が自分を受け入れようとしてくれているのに、自分がありのままの一樹を受け入れられなくてどうするのか。少しずつ、少しずつ元の姿を取り戻せればいい。少しずつ自分に染め直せばいい…。
本来この行為は、恐怖が伴うものではないのだから。


「あ…ぁっ、あ…!誉…誉……ッ、んんっ」


一樹は自らTシャツを捲り、唾液に濡れた指で勃ち上がった乳首を撫でる。きゅ、と摘むとぞくりとした快感が走り、一樹は吐息混じりの高い声を漏らした。親指の腹で押し潰し、弄る。そうして相手と自分を煽りながら、一樹は錫也に教え込まれた言葉を意図せずに言ってしまう。


「ん…、ぅ…っ はぁ…っあ、あぁ………も…後ろも…触っ、て…?」


「…ッ」


乱れた格好でそんな事を言われては、ある種言わされているようなものだとわかっていてもくらりとしてしまう。誉は生唾を呑むと、一樹の先走りに濡れた指を後孔へと滑らせた。縁を撫で回し濡らしていくと、一樹の身体は小さく跳ねる。


「ぁ、…んっ、ん…!…ほ、誉………っ」


「一樹…、いれるよ」


「うあっ!〜〜〜っ、ぁ、あ……っ」


誉が長い中指をそっと捩込むと、一樹はびくんっと身体を反らせた。指を締め付けるナカは熱い…が、歯を食いしばったり、眉間にしわを寄せる一樹を見て最初は指の挿入による反応かと思っていたが…どうにもおかしいと誉は気が付く。


「ッあ、ぁ…!」


「一樹…!?」


仕舞いには腕で顔を覆い、らしくもなく涙を零し始めてしまった為誉は慌てて指を引き抜いた。紅潮していた頬はすっかり青ざめ、手は震えてしまっている。


「一樹!だ、大丈夫…っ?」


一樹を刺激しないよう誉が静かに腕に触れる、が、軽く触れただけでも怯えたように身体を強張らせる彼に思わず手を引いてしまった。


「ご…め………っ、誉…ごめ、ん…!」


腕で顔を隠したまま、一樹は泣きながら謝罪する。


「お前だって…っ、分かってるのに………、ぅっ、く……身体が…、…言うこと聞かない…ッ」


「…一樹……」


相手が誉なら大丈夫だと、そう思っていた。…しかしセックスがトラウマとなってしまっている状態で事を急いたのがいけなかったようで、"男の指"が侵入してきた途端、身体が勝手に拒絶したのだ。これはあの男じゃない、錫也じゃない、と自分に言い聞かせてもどうにもならず、ついには涙が溢れてしまう。
誉は、嗚咽する一樹の腕にもう一度触れた。


「一樹…、ねぇ…聞いて?」


「…っ、……」


一樹がそっと腕を下ろし、涙に濡れた目が覗く。普段の凛々しい眉は、不安だけを表していた。


「僕は…一樹に無理をさせたくないんだ。」


「う……、」


「無理させてごめんね…」


やっとわかった。どうして一樹が、わざと誘うような行動を取ったのかが。…単純に、怖かったのだ。頭では分かっていても、今までは"ああしなければ"酷い目に遭ってきたという記憶は、逃避の為に一樹を淫らに振る舞わせた。
気付けなくてごめん。
陰っていた心が、晴れていく気がした。


「どんなに時間がかかってもいい。ゆっくり受け入れてくれて欲しいんだ……僕の事を。」


「誉…。………、…面倒かけて…悪い」


「面倒なんかじゃないよ…。でも、一樹が面倒って思っちゃうなら…それでもどんどんかけて欲しい」


「…え……っ」


腕を下ろした一樹の、涙の引いた目元に軽いキスを落とす。宥めるように頬にも優しく口付けると、誉は小さく呟いた。


「一樹にかけられる面倒なら、僕は凄く嬉しいな」


「っ…!……馬鹿、野郎…っ」


「うんっ 僕…一樹馬鹿だもん」


「ほまっ、ん…んぅぅ…っ…」


色を取り戻した頬を包み、誉は一樹の唇に熱くキスをする。何度も唇を触れ合わせるが、ここにきても誉は舌を入れなかった。そして一樹は思う。どこまで誉は優しいのか、と。そんな相手を拒絶してしまった自分を呪いたくもなったが、それで誉が喜ぶわけではないと分かっていた。せめて自分から前進していきたい、そう思い、一樹は恐る恐る舌を差し出した。


「かずっ、き……、…んんっ……」


「はっ、ぁ…んぅ……、んんんっ!」


一樹の積極的な行動に胸が高鳴り、誉は甘さを確かめるように舌を絡める。誉の首に回された腕が緊張しているのは、嬉しさによる身体の高ぶりからだった。
誉がようやく唇を離した頃には一樹の息は上がっていて、潤んだ瞳が何を望んでいるか誉はすぐに気が付いた。


「イきたい…?」


太股の内側を撫で上げ、陰茎に触れる。ゆるゆると扱いていくと、一樹は素直に頷いた。


「んっ、……あ、ぁ…っ」


「一樹、怖くない?平気…?」


「平気、…っだから……ぁっ、あ…!……もっ、と…」


消え入りそうな声。先程の"台詞"とは違う、一樹自身の言葉だと誉は察した。切なく、恥ずかしさが滲んでいて、それでも欲しがっていて…。一樹も、自分の意思で絶頂をねだった事がないのか…その顔は羞恥に赤く染まっていた。


「やっ、ぅ……あんん!…っ…く、ぁ…誉……ほまれ…っ」


「一樹…、ふふ、もうイきそう?」


「んん、ん……っ!も、…駄目、ぇ…っ」


段々と頭がぼーっとして、脳が痺れる。手が動かされる度にそれが強まり、一樹は声を抑える為に手で口を塞いだ。くぐもった声が漏れるが誉はその手を引きはがしたりはせず、優しく頭を撫でてやる。
呼吸の間隔が徐々に狭まり水音がはっきりと耳につくようになった頃、一樹は「イく」と小さく訴えた。


「ふぁっ、ぁ…ほま、れ……っんぁあ!あ、……イく…ぅ…っ、もう……んっ、んん…っ」


「いいよ、一樹………ほら…っ」


「んんぅっ!ひ、ぁ…っ、……ぅ、ん…っ はっ、…ぁ…ああああぁっ!………ぁ…!」


びくびくと身体が痙攣し、一樹は腹に自分の精液がかかるのを感じる。好きな人にイかされるという、心を伴う快感は錫也がいくら一樹を抱いても与える事のできないものだった。絶頂の余韻に浸っていると誉が手近にあったティッシュで精液を拭き取り始めたので、「え…?」と目をしばたたかせた。身体を起こし、きょとんとして見上げる。


「誉…?」


「ん?」


「いや、その………」


「あぁ、…いいんだよ」


一樹が何を言いたいのか悟ったのか、誉は頷いた。微笑みながら一樹の頭を撫で、額にキスをする。
誉は己の欲を吐き出す事もなく、この行為を終えようとしていた。ようやく一樹と触れ合えたのだから勿論、誉は一樹を抱く事すら考えていたのだが予想外に一樹の傷は深く、今抱いてしまってはより一層一樹を恐怖の淵に落としかねないと気付いた。加えて高ぶりすらも放置したのは、一樹を自分の欲望のままにしたいわけではないと分かって欲しかったからである(根底には錫也への対抗心もあった)。


「言ったでしょ?僕は一樹に、無理をして欲しくないんだ。」


「………誉…」


「まぁ、本音を言っちゃえば…一樹の事、ぱくって食べちゃいたいんだけどね?」


でも、独り善がりじゃなくて…ちゃんと二人で歩んでいくべきだと思うから。
ぺろりと舌を出して悪戯っぽく笑った後に、誉は真剣な声色で言う。一方通行ではなく、想いを通わせていきたいのだという誉の意思を悟り、一樹は息を詰まらせた。


「………ほんっと…、馬鹿、だな…」


涙声になってしまったのをごまかすように、一樹は笑う。泣きそうになるのを無理に笑顔にしているのに、その顔はとても幸せそうだった。

















end














2012.6.26

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