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お試し箱

同じく、少女が死んだ春の季節。
新婚ほやほやの夫婦に待望の赤子が産まれたのだ。
二卵性の双子、可愛らしい男の子と女の子だ。

真辺さん家に産まれた男児は、学(まなぶ)と名づけられ
女児は、○○(○○)と名づけられた。

双子は、すくすくと育ち
あっという間に三歳になった。
二卵性の双子だが学と○○は、そっくりで
二人の両親でさえも、じっくり見なければ
どちらが学で○○だか解らない程だった。

言葉も呂律が回ってないが話す様になった。
二人が最初に話した言葉は、互いの名前。
両親は、自分を呼んで貰えないのに少しガッカリしたが
双子の仲睦まじさに喜んでいた。

「はじめは、双子だったのに吃驚して大変だったけれど」

「双子も良いだろ?」

「そうね、可愛いわ」

学と○○がベビーベッドで寝てる間
両親は、双子について話していた。

「学の目は、お前に似てるな」

「あら、○○の目だって私に似てるわよ」

「俺と似てるところは、どこなんだ」

「さぁねー、髪の毛の色かしら」

老人もビックリな父の白色の髪を指差し
くすくす、と母が笑い父をからかっていた。
なかなか自分に似ている所が無いのか
父は肩が下がり目に見えてガッカリしている。

「あ」

それでも自分に似た所をどうしても見つけたいのか
必死に探している父に、母の声が届いた。

「どうした?」

「貴方に似てる所ありましたよ」

「どこだ!」

食いつかんばかりの父に苦笑して母は言った。

「二人の優しそうな顔ですよ」

「っば・・・」

母の悪意の無い天然な口説き文句に
父は、口をあけて固まった。
久しぶりに言われたのか
はたまた、そういう言葉に慣れてないのか
父の顔は真っ赤に染まっている。

子供が産まれて早三年というのに
二人のラブラブは相変わらずのご様子。
きっと二人が成長しても
いつまでも新婚気分でラブラブなんだろう。
その様子が目に浮かぶ。


桜が舞う季節
渡辺さん家に春が来ました。

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