お試し箱
2
同じく、少女が死んだ春の季節。
新婚ほやほやの夫婦に待望の赤子が産まれたのだ。
二卵性の双子、可愛らしい男の子と女の子だ。
真辺さん家に産まれた男児は、学(まなぶ)と名づけられ
女児は、○○(○○)と名づけられた。
双子は、すくすくと育ち
あっという間に三歳になった。
二卵性の双子だが学と○○は、そっくりで
二人の両親でさえも、じっくり見なければ
どちらが学で○○だか解らない程だった。
言葉も呂律が回ってないが話す様になった。
二人が最初に話した言葉は、互いの名前。
両親は、自分を呼んで貰えないのに少しガッカリしたが
双子の仲睦まじさに喜んでいた。
「はじめは、双子だったのに吃驚して大変だったけれど」
「双子も良いだろ?」
「そうね、可愛いわ」
学と○○がベビーベッドで寝てる間
両親は、双子について話していた。
「学の目は、お前に似てるな」
「あら、○○の目だって私に似てるわよ」
「俺と似てるところは、どこなんだ」
「さぁねー、髪の毛の色かしら」
老人もビックリな父の白色の髪を指差し
くすくす、と母が笑い父をからかっていた。
なかなか自分に似ている所が無いのか
父は肩が下がり目に見えてガッカリしている。
「あ」
それでも自分に似た所をどうしても見つけたいのか
必死に探している父に、母の声が届いた。
「どうした?」
「貴方に似てる所ありましたよ」
「どこだ!」
食いつかんばかりの父に苦笑して母は言った。
「二人の優しそうな顔ですよ」
「っば・・・」
母の悪意の無い天然な口説き文句に
父は、口をあけて固まった。
久しぶりに言われたのか
はたまた、そういう言葉に慣れてないのか
父の顔は真っ赤に染まっている。
子供が産まれて早三年というのに
二人のラブラブは相変わらずのご様子。
きっと二人が成長しても
いつまでも新婚気分でラブラブなんだろう。
その様子が目に浮かぶ。
桜が舞う季節
渡辺さん家に春が来ました。
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