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 学校で会ったアミイさんは、あの日の面影をあまり感じない。


 しかしマナミが言うのだから影ロウのボーカルはアミイさんで、今ここにいる麻藤 亜美依は影ロウのボーカルなのだ。

 今、同じこと言った?言ったよね。


 「カノン?そうだよ、運命の人だよ」


 そしてこんなことを言うのも、アミイさんなのだ。もっと現実を見ているヒトかと思っていたが……まぁ妙なチカラもらった人間が現実とか言っちゃダメだよな。


 「あ、修ちゃん疑ってるでしょ」


 あーいやー、その……はい。

 オレの返事に、アミイさんは苦笑いしながらスラスラと走らせていたシャーペンを置く。テスト期間中は、こうして寮で勉強するのが恒例になっている。

 オレはしないけど。ていうかマナミの課題をやらされる。


 「ワタシ達ね、付き合ってすぐくらいに、前世占いで有名なヒトんとこ行ったの」


 ちなみにマナミはというと、テスト期間にも関わらず部活をやっているという中等バスケ部の見学に行った。もう帰ってこなければいいのに。


 「そこの占い師がね、いっぱい教えてくれたの。例えば、ワタシには双子の姉妹がいて、ワタシは自殺したらしいよ」


 え、アミイさんが?


 「前のワタシがよ。それでワタシとカノンの前世のヒトは比較的近くにいたけど、関わりはなかったんだって。それでね――」


 と、ニヤリと微笑みが入り混じったような笑みで、少し身を乗り出してくる。そして、言った。


 「カノンは、ワタシの家族の誰かに、殺されたんだって」


 ……は?


 「たぶん双子の姉妹らしいんだけど、ワタシとカノンの死期が同じくらいなんだってよ。すごいよね」


 いや、なんか、やけにリアルっすね。優秀な占い師なんすね。


 「そう。それで生前に関わりはなかったハズなんだけど、ワタシとカノンは、何故か強い繋がりがあるんだって」


 それをアミイさんは、運命というんですか?


 「うん。だって今こうしてワタシとカノンは出会って、一緒に唄っている。これが現実」

 『繰リ返ス、クダラナイリアル』


 今まで楽しそうに話していたアミイさんだが、一瞬、本当に一瞬だけ、誰かを見下すような表情が垣間見えた。心の声音も、そんな感じで。

 とっさに右目を隠したが、遅かった。


 「ワタシの心、見えたの?」


 ばつが悪い。ここは素直にうなずくしかない。

 アミイさんは怒るわけでも、動揺するでもなく、オレに聞いた。


 「ワタシ、なんて言っていた?」


 これにはオレが動揺した。

 だって、笑ってそんなこと聞くか?

 そして正直に答えるべきか、迷った。


 「なになにー?」


 にまにまとオレを見るアミイさんに、オレは嘘をついた。

 楽しい、と。

 それを聞いたアミイさんは、真顔になり、ふぅん、と声をもらす。


 「ワタシ、楽しいんだ」


 その後は、勉強に戻ったアミイさんと、課題の解答とにらめっこするオレは、何もしゃべらず黙々と作業を続けた。

 昼間の陽気に包まれた穏やかな静寂ではなく、どこかピンと張り詰めた、そんな空気。

 しばらく堪えていたが、どうにも居づらくなって、顔を上げた。


 『こんな繰り返しの現実に、ワタシは満足しているんだ』

 『簡単にリセットできる人生を、楽しいと思っているんだ』

 『本当に?ワタシは本当にそう思ったの?』

 『楽しい?今のワタシは』

 『このリアルは』

 『楽しい?』

 『スリルもワクワクもない』

 『生まれ変わっても』

 『生まれ変わっても』

 『生まれ変わっても』

 『ワタシは、』


 「どうしたの、修ちゃん?」


 椅子を弾くように駆け出し、玄関に向かう。マナミのキ●ィさん健康サンダルに足を突っ込み、扉を蹴破り外に出る。

 しばらく闇雲に走り続け、息があがってきたので止まる。手をついた窓ガラスの向こうに鏡があった。



 そこに映る自分の青い目に、初めて恐怖した。



 


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あきゅろす。
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