B
最近、学校全体がうわついている。
それもそうか。イベントが近づくとなんかワクワクするのだろう。
その分、役員は休み時間に忙しく走り回り、授業に遅れても先生は目をつぶってくれる。
そんな感じでオレを含む数名は、着席するみんなの視線を浴びながら、自分の席に戻るのだった。
「大変だね。修」
三棟交流会、というこの学校オリジナルの行事がある。
小等部、中等部、高等部、この三つが合同で行う、平たく言えば交流会だ。
「おーい、しゅーうちゃん」
……交流会は三週間行われ、第一週を小等部、二週を中等部、三週が高等部、それぞれが企画したゲームみたいなのを行う。
「何、僕を見ると照れちゃうのかい?シャイだね」
……うるさい、黙れ。せっかく解説しているっていうのに。
「誰に?」
……。と、とにかく黙れ。後ろでギャーギャーやかましいんだよ。
「はいはい」
あーマジうざいっす。奈津矢のあんちきしょうめ。いつかギタギタにしてやる。
話を戻すけど、
「おい捺谷、早く前に出ろ」
なんだよもう。HRかよ。
委員長虎ヶ峰に呼ばれ、オレを含む3名の交流会役員が前に出る。
「修、また秋くんと話してたでしょ?」
オレを無理矢理役員にしやがった悪鬼、理香(リカ)がニヤニヤへらへら耳打ちしてくる。
うるさいんだけど、さっさと告白でもなんでもすりゃあいいじゃねぇか。応援してやるよ、有料で。
「うわ、寝グセ小娘がよく言うよ」
うっせ。寝グセ万歳だ。お前みたいにほいほい色気づかないんだオレは。硬派なの。
「なにが硬派よ。そういう風体装う刑事に限って、フェロモンに激弱なのよ」
刑事じゃねーよ。情報偏ってるよ。
「野木(ノギ)、捺谷。平方(ヒラカタ)にばっかやらせないで協力しろ」
あ、ごめんイインチョー。
「虎ヶ峰くんこそ真の硬派よ」
そうなのか?
あ、そうそう。三棟交流会の進行ね。悪りぃなゴロー。
来週からいよいよ交流会が始まるわけだが、まずは一週目、小等部企画のイベントだ。
みんな小等部を見下しているらしく、あまり期待をしていないようだ。まぁガキの考えることだから長縄とか劇とかそういうんだろ、っていう考えだな。
「とりあえず聞け」
低い声で凄むのは理香。ざわついた教室がわずかに静まる。
「小等部が企画したが、中等部も高等部も楽しめるように、ちゃんと会議をしたんだ」
クラスにひとりはいる髪型をした、野球部平方吾郎が説明する。虎ヶ峰に継ぐ委員長キャラだ。
「半日かけて行う。ただし全員参加できるわけじゃない」
全校生徒4ケタだもんな。
「今回のイベントは――」
ゴローは言葉を切ると、近くにあった黄色チョークを片手に、荒々しくしかし綺麗に達筆に黒板を刻む。
鬼ごっこ、と。
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