G この学校は広い。 そりゃあ小中高が合体したんだから狭けりゃ困るだろうけど…… 校庭5つにグラウンド2つって数合わなくね?そしてすべてちゃんと使ってるあたり、すごいと思う。 おかげで目的地に着くまでに迷うことしばし。 第二グラウンド あった……疲れた、もう帰りたい。 マナミはアミイさんのライブの手伝いをするべく、朝早くから出掛けたらしい。起きたら書き置きが残してあった。 あのマナミが進んで手伝いするんだ、アミイさんのバンドはすごいんだろうなぁ。 そんなこんなでやっぱりヒマを持て余しているオレは、こうして学校探険をしているワケだ。 陸上部、か。 グラウンドに入ってみれば、そこには休憩中なのか、ジャージを着た、いかにも運動できそうな人々が、水道に集まっていた。 べつに用があるわけではないので、邪魔しないように隅をふらふら歩く。やたら広いので一週するのも一苦労だ。 「――ちょっとアナタっ」 あー、やっぱ無断はまずかったか。とりあえずバツの悪そうな顔をして振り返る。 オレに向かってずんずん歩いてくるのはひとり。ウェーブした毛先が歩調に合わせひょこひょこ揺れる。 あぁ……あの人は。 なんたる偶然。なんたる悪運。まさかあの人が陸上部だったなんて……意外。 「アナタ――」 茶髪とは違った明るい髪、それと同じ色した猫目。マナミ程ではないが、少なくともオレのクラスでは超有名。 「昨日、ユーシに声かけてたわね!?」 名を、神丘 撫子という。オレらのひとつ上。 「無視するの!?アナタ何様!?海王様!?」 なんで海王なんだよ。 いや、そうじゃなくて、すんません。はい。 「で、質問の答えは?」 声かけました。ちょっと用事があったんす。 「何よ、用事って」 ここでは言わないが、なでしこ先輩はちょくちょくオレ達の教室に顔を出す。何故って、虎ヶ峰の様子を伺いに。 先日マナミが話した通り、虎ヶ峰と神丘は家族間、さらに会社らへんでも繋がりが強い、らしい。 だから幼なじみ的な感覚でやって来る。……どんな感覚だよ。 「……」 あ、いけない。 えーと、ちょっと今度の三棟交流会の、ヤツが、っす。 「ふぅん」 やべ、しどろもどろ。 あとマナミが虎ヶみ―― 「マナミって、叶亥 マナミ!?」 バックステップしながら叫ぶなでしこ先輩。驚愕というか恐怖の表情でオレを見る。めっちゃ引きつってんすけど。 謎のリアクションに戸惑いつつも、首を2度、縦に動かす。 途端に、 「まさか、アナタ……捺谷 修?」 距離を置かれた。すっごい及び腰になってますよ先輩。 捺谷ですがなにか? オレの言葉になでしこ先輩は口だけ動かす。言葉になってないだけか。 「そう!じゃあ、叶亥さんによろしく!三棟交流会頑張って!じゃあ、よろしく!」 急にそう叫ぶとくるんと後ろを向いて走り去っていった。よろしく2回言いましたけど。 ていうかなんで動揺したんだ? マナミの名はそこまでチカラを持ったのか。敵じゃなくてよかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |