E
することがないと、休みはあっという間に終わる。
昼と夕方の間らへん。これから茜に染まりゆく空を、ぼんやり眺めていた。
マナミはバスケ部を見に行くと、寮住みの何人かを連れ、昼過ぎに体育館へ行ったきりだ。いっそもう帰ってこなけりゃいいのに。
オレも強く、そりゃもう強く誘われたが、その6倍くらいの力で断った。間違ってもバスケ部には行かない。絶対に。
ひとりで他にヒマな人はおらず、30分前からこうして校門の前でぼんやりしている。
「ヒマだ……」
口にしたってヒマじゃなくなるわけでもないし。
帰って寝るのもアリだけど、ヒマ人なオレにも用があるんだ。
ほら、来た来た。
「あ、捺谷……」
頭がボサボサの虎ヶ峰だ。さっきから剣道部員が出て来ていたから、だいぶ待ちくたびれた。
「さっきも言っただろ。俺は宝探しに協力しない」
決然とした表情でキッパリと。いや、そっちのハナシじゃ……なくないんだけど、
ちょっと、気になることが。
「なんだ?」
お前、さ
――なにか願いたいこと、ある?
「何故、そんなことを聞く」
また言葉選んでる。
いや、さっき考えてたんだ、ヒマだったから。
オレは今こうやって、神からチカラもらったヤツを探して協力を頼んでいるんだが……
正直、神に聞いてもらうほどの願いなんて、ないんだよ。
だから、他の人は何を願うんだろう。って。
「ないのか、願い」
無い。2時間考えて出てこないんだから、無いんだろうな。
「本当に持て余していたんだな」
うるさい。それでお前の願いはなんだよ。
虎ヶ峰は仏頂面にわずかだが浮かべた笑みを引っ込め、
「……俺も、無いな」
マジで?
「あぁ、俺も捺谷と叶亥先輩が行った後、考えたんだが……わからなかった」
呆れたように肩をすくめる。
無い願いに呆れたのか、願いの無い自分に呆れたのか。
「だから宝探しをしたって、俺が得るモノはない」
人情派の虎ヶ峰にしては、ずいぶん珍しいことを言う。利益で動くような人間ではないと思っていたのに。
常に人の目を見て物申すコイツが、うつむいたまま断ったこと。
虎ヶ峰の『核』は、弱っている。
その原因は一体どこにあるんだ。それを見つけない限り、虎ヶ峰は協力しないだろうし、たぶん――願いも見つからない。
ゼウスがオレだけに出した宝探し、ちゃんとやってんだぞ。偉いだろ。
「じゃあ、捺谷も気をつけろよ」
なにを気をつければいいのかよくわかんないけどね。
ひらりと手をあげ、歩き出した虎ヶ峰の背中を見ていた。
「よし……」
ちいさくつぶやき、オレも歩き出す。
こうなったらアイツの出番だ。
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