A この季節は嫌いだ。 青く赤く映えていた葉が、茶色くくすんで乾いた音をたてる。刹那しか与えられぬ夕陽が、限られた時の中、炎のように輝き、消える。 命が眠り、乾く季節。 唯一良いと思えるのは、凛と冴えてゆく空気くらい。 でも……寒い。 そろそろマフラーが欲しくなるな、でもまだ早いかも。 「ホラ、修。ちゃっちゃと歩くっ」 ……なんでそんな元気なんだよ、オレより薄着に見えるんだけど、 「背中とお腹にカ●ロ貼ってるの」 ずるい。一枚よこせ。 「若いんだから気合いで充分っ」 小賢しい。お前の買い出しなんかに付き合うんじゃなかった。 「え、じゃあいらないの?」 ……誰もそんなこと言ってないだろ! さぁ早く消しゴムでも輪ゴムでもベ●ツでも買うぞ!! 「ベ●ツはいらないかな」 そう言うと、某リスのマークがシンボルの雑貨屋に入ろうとして――止まった。 マナミの背中にモロにぶつかるが、マナミは一点を見つめたまま、動かない。 正面に回ってみれば、驚いたような――それでいて冷めたような目で、店と100人乗っても大丈夫らしい倉庫の隙間を見ていた。 あっ…… 「うちの制服ね」 周りから死角になるその隙間には、地元の高校の制服が3つと、うちの学校の制服を着た男子がひとり。巨大スポーツバッグを提げているあたり、部活帰りと考えられる。 部活帰りのそいつはひとまわり大きい3人に囲まれ、なんていうか……脅されてるみたいだ。 「中等部の子だわ」 目のいいマナミが言うんだ、間違いないだろう。 トリ目のオレにはみんな影にしか見えないが少なくとも、脅されてりゃいいのに、と思う憎たらしいアイツではない。 「……」 マナミは黙ってその様子を傍観する。 オレも助けに行ってもいいが、漢のプライドってのもあるだろうし、そもそも助けられるかどうか疑問だ。 マナミ、お前のチカラでなんとかならない? 「無理」 だよね…… どうするか考え、動けずにいると、向こうでは結構話が進んできてるらしい。 「――っ!!」「……ろがぁ!」 語気を荒げはじめ、険悪な空気がこっちまで伝わってくる。 「あの子、ビクともしない。なかなかやるわね」 状況が掴めるマナミは淡々と感想を述べる。つまり怒っているのは高校生か。 不意打ちかけるか……といよいよ突撃準備をしかけた時、 ガァァァァアァァァアアァァァァアァアァァァァアア―― 何処かで化け物が、哭(ナ)いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |