under 王国パラレル(規格外6) ・・・・ぱたぱたと、軽い足音が聞こえた。 キングサイズのベッドの上で休んでいた僕は、長く伸びた髪をかきあげながら身体を起こした。 軽い足音は、寝室の扉の前で一端止まり小さなノックが扉を通して広い寝室に響いた。 僕がいらえを返すと、扉のノブが回され扉が開いた。 「お早うございます、母様。もう七時ですよ。母様はお寝坊ですわね」 今年幼稚園に上がったばかりの、紫月様は真っ直ぐに僕の休む広いベッドに走りより、よいしょよいしょとベッドによじ登る。 「はい、お早うございます、紫月様」 「今日のお加減は如何ですの、母様。もしお悪いのでしたら、お休みになってくださいな」 「いいえ。今日は大分、気分が良くて」 「そうでしたの!それはよろしゅうございましたわ、私が幼稚園から戻りましたら遊びましょうね。本当は幼稚園など休んで遊びたいのですけれども、そうなると母様がお困りになるでしょう?ですから幼稚園に行って参りますわ。さあ母様、今日はどちらにリボンがよろしいと思います?」 小さな手が差し出したのは、赤と青の、可愛らしいリボンでどうやら僕の選んだほうを、紫月様は結った髪に飾られるらしい。 どちらをしても、大層よくお似合いであろうけれども、どちらも捨てがたい。 うんうん唸る僕を前に、紫月様はお早く決めてくださいな、と急かす。 唸る僕の背後から、腕が伸びる。赤のリボンを紫月様から取り、膝元に投げた。 「父様、お早うございます。今日はこちらに致しますわ。母様はこちらのリボンですよ。」 僕の手に青のリボンを握らせた紫月様はベッドから飛び降り、部屋から退室してしまわれた。 僕の腰に、長い腕がまわり背後に引き寄せられた僕は厚い胸板に後頭部を預けた。 「おはようございます、皇夜様」 僕の首筋に、唇をおしあてた皇夜様に挨拶をすると唇が離れていった。 「今日は顔色が良いようだな」 深い闇色の瞳が、僕の色合いの薄い瞳を覗き込む。 「本当ですか?」 僕が声を弾ませると、皇夜様は一つ頷き僕を抱えあげベッドからおりた。 「あ、あの。庭に出てもよいでしょうか。花の蕾が、開きかけていて本当に綺麗で。で、ですからあの」 「・・・・30分だけなら構わん」 あまり機嫌の優れない声音ではあったけれども、お許しをいただけて僕は安堵した。 寝室から出ると、お早うございます、父様、母様と直ぐに声がかかった。 紫月様の兄、今年で七歳になる満夜様で僕はお早うございます、と挨拶した。 「母様、今日はお加減がよろしいのですか?お顔の色がとても良いですもの」 皇夜様の腕のなかに抱えられたままの僕を覗き込もうと必死に背伸びをする満夜様に、それとなく皇夜様に僕を下ろしていただけるよう、お顔を見上げたのだけれども皇夜様はおろすつもりはないようだった。 そのかわり、満夜様を促し足早に居間に向かわれ、満夜様も追い掛けてきた。 居間に着くなり、皇夜様はソファーに僕を下ろした。 「お早うございます、朔夜様。今日はお加減がよろしいようでございますわね」 メイド頭のマリアが僕に温かい茶を給仕してくれながらにこやかにそう言った。 体調が優れず、居間ではなく寝室に休んだままになるときもある僕はマリアの言葉に頷いた。 「母様、あとでマリアに髪を結っていただくと、よろしいですよ。さあさ、母様私をお膝に乗せてくださいな!」 「紫月、だめだよ。紫月をのせたら母様はお疲れになってしまうもの。それよりも早く食べないと遅刻してしまうよ」 僕に手をのばした紫月様の手を、満夜様がとり二人仲良く、食事の用意されたテーブルにかけていった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |