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遊郭パラレル(貪欲2)10
「え?」


後生だと、番頭さんのみならず楼主にまで深々と、頭を下げられてしまった僕は困惑した声をあげた。
まだ見世が開いている時間だったが、酷く慌てた様子の番頭さんと楼主が揃って僕の部屋を訪れた。


「身請けをされたお前に、こんなことを頼むなど筋違いも甚だしいことは充分承知している。だが、あのお客様はこの見世にとってはとても大事なお客様なんだよ。お前はもう身請けされている、お相手をしろとはいわない、あのおかたに会ってもらえないか」


これまでお世話になった、番頭さんと楼主にそう頭を下げられてしまっては断ることなど、到底出来なかったのだけれども、あの青年が置いていった書物が頭に浮かんだ。
僕はもう、静光様に身請けされている。色子としての役目を行うつもりない。
けれど、三年もの間、あの方は僕のもとにきてくださった。静光様に身請けされてしまえば、もう二度とお会いすることはない。
・・・・その前に、最後にお会いしておきたい。





青年は、その二日後見世を訪れた。
番頭は病み上がり故、色子の勤めは行えないことを青年に告げ、朔夜の部屋に通した。
小脇に荷物を抱えた青年は色子の衣装を纏っているものの、顔色の優れない朔夜の姿に眉をひそめた。


「・・・・もういいのか」


青年が腰を下ろしながら尋ねると、朔夜は申し訳なさそうに頭を下げた。


「病み上がりでして、見苦しい姿をお見せしまして」


明るい衣装を纏っているものの、顔色はやはり優れない。心なしか頬の肉も削げたようだと、青年は朔夜の頬に指を伸ばした。
ふと、青年は埒もない本当に埒もない問いを、色子や遊女に尋ねるべくもない問いを肉の薄い唇にのせていた。


「何故色子を生業にしている?」


青年の問いに、朔夜は伏せてきた瞼をあげきょとんと青年と目線をあわせた。


「あ、えと。二親が、とても大きな、借金をのこしまして。二親亡き後、この虎月楼に、売られましたので、それ以来色子として、暮らしております」


殆ど、予想していた答えであったが青年はそうか、とただ頷いた。
暫く肉の削げた朔夜の頬に指を滑らせていた青年は、朔夜に膝を貸すよう一言命じ、朔夜の膝を枕に、寝息をたてはじめる。
落籍されたことは、くれぐれも悟られぬようにと楼主に言われているために、きちんとした挨拶が出来ないことだけが、心残りだった。




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あきゅろす。
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