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小説
肌に、触れる。(2)
「静光」


身体を包む毛布のなかで、もぞもぞと身動きする僕は僕を抱き抱える皇夜の声の低さに、動きを止めた。
恐る恐る、頭一つ半高い美貌を見上げる。


「さくちゃん、風邪ひいたら大変だろ?それに、さくちゃんがこんなに嫌がるのも珍しいし。どうかしたの、さくちゃん」


常と変わらぬ、飄々とした返答をしたせいちゃんは、言葉に反応し身体を揺らした僕の直ぐ隣に腰を下した。男三人が体重をかけ座っていても、ベッドは軋む音一つたてない。


「どうか、って」


身体にまき付けられた毛布が、僕の貧相で醜い身体をおおいかくしていることを確認しながら、僕は瞳ばかりは橙色ではなく、色薄い琥珀の瞳で見つめてくるせいちゃんに尋ね返した。
しきりに毛布をかきあわせ、身体ばかりでなく指先まで包もうとする僕にせいちゃんは更に顔を近付けた。

一つしかない室内灯がせいちゃんを頭上から照らす。橙色の髪を金に染めるだけでなく、琥珀色の色薄いまでも金に変える。皇夜の無明の闇を覗くあの恐ろしさとは別種の、凄みを帯びたそれに僕は軽く息をのんだ。

「だってさくちゃん、いつもはこんなに嫌がらないでしょう?少し様子も変だしね。どうかしたの?」


小首を傾げ僕を気遣うような、優しい言葉は僕のささくれた心に新たな傷を生んだ。
僕を抱き上げている皇夜の鋼のように堅い腕に力が入り、僕をせいちゃんから僅かに遠ざける。
せいちゃんは肩をすくめ、更に僕に問いを重ねた。


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あきゅろす。
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