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Lv.1-30
 ガチャン、と酷く高い音が響いた。
 金属と硬い何かがぶつかる音だ。そして弾ける音。そうだ、皿が落ちたのだ。
 そして俺のこんがらがった脳内で出した結論通り、手の内にあったはずの陶器の皿が見事に割れて破片がそこらに飛び散っていた。
 それは俺の腕にも掠めていったらしく、洗剤の泡に混じって赤い血が腕を染めていた。
 でも、痛みはない。痛みよりも、訳がわからない何かが脳内を暴れまわっていた。

 ―――駄目だ、考えちゃ駄目だ。

 蛇口から流れっ放しの水が排水溝に渦を巻いて吸い込まれていく様子を見て、何とか自分を落ち着かせようと俺は必死だった。

「彼方?!」

 そして音を聞き咎めて未来とミツハさんがキッチンに入ってきた。自分の名前を呼ばれて、俺はハッと顔をあげた。

「どうした?!」

 未来が慌てた様子で近寄ってくる。その顔には、サングラスはない。

 ―――ああ、やっぱり綺麗な赤紫色だ。

 俺が未来の顔を見てそんなことを考えていると、ミツハさんが「馬鹿、呆けてる場合じゃねぇ」と俺を叱った。
 それで俺は再びシンクに視線を落とした。
 流れ続ける水の中に、白い皿の残骸が視界に映り込む。ああ、どうしよう、皿割っちゃった、これ、未来のだ。
 俺は再び鈍い動きで隣に寄ってきた未来の顔を見上げた。

「あ、ごめ、皿割っちゃった、ごめん」

 自分の声なのに、やたら震えの籠った音しか口から出てこない。
 さらに募った情けなさに俺はひたすらごめんと未来に繰り返した。

「そんなのどうでもいい、腕見せろ、切れてんじゃねぇか!」

 未来は俺の言葉を遮って血の出ている腕を引っ張る。
 余程大きな破片が掠ったのか突き刺さったのか、腕に意識を集中させるとジンジンとした痛みが襲ってきた。血も、大分流れている。
 ああ、そうだった、血が出てるんだもんな、痛いに決まってるよな、と俺は俺のことなのにまるで他人のように考えた。


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あきゅろす。
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