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Lv.1-26
 と、いうわけで、俺は自分の仕事に取り掛かった。後片付けは俺の仕事だからな。
 俺は冷たい水に手を晒しながら使った食器にスポンジを滑らせていく。キュッキュと手際よくそれらを洗っていると、ダイニングの方から「つうか未来さ」というミツハさんの声が響いた。
 ミツハさんの声は綺麗でよく響くんだ。聞き易いし、俺は大好きだ。
 それに対して、「あぁ?」という未来の苛立ちの残る声音が聞こえた。
 未来の声も、低いけれども決して聞き取り難いものではない、綺麗なものだ。男らしいというか、うん、羨ましい声だ。っていうか俺、聞き耳立ててていいのかな、…まぁいいか?
 俺のそんな逡巡など知るところではない二人は会話を続ける。

「それ、室内では外せって」

 ミツハさんが未来にそう放った。
 更に「視力落ちるぞ」と続けたので、俺は『それ』が未来の顔に常時存在するサングラスのことだと悟る。そりゃ、ずっとつけてれば視力も落ちるだろうな、と俺は一人頷く。

「…別にいいだろ。支障が出るようなら『治癒(キュア)』で治せばいいだけだ」

 ミツハさんの心配を余所に、未来は酷く素っ気ない声で返した。な、何というやつ。ミツハさんが心配してるっていうのに!
 俺は怒りのあまり思わず手の中に握っていた皿を叩き割りそうになった。…勿体ないから寸止めしたけど。
 そしてミツハさんはそんな未来に対してハァと溜息を吐いたようだ。一拍置いて再び声が響く。
 
「そういう問題じゃねぇ。俺が単に見苦しいって言ってんだ」

 トントン、とテーブルを軽く小突いているような音が聞こえてくる。おそらくミツハさんがやっているのだろう。
 俺は手に持ったままだった洗った皿をラックに収めた。あんまり持ったままにすると衝動で割るからな。

「…迷惑掛けてねぇだろ」

 おお、食い下がるな、未来。

「掛けてる掛けてる、主に俺の精神にな」

 ミツハさんも譲らない。ダイニングが凄いことになっている模様だ。

「……いやだ」

 しばしの間の後、未来が一言零した。
 分はどう見ても未来が悪い。ミツハさんが優勢だな。俺は一人、心の中で実況兼解説者となった。


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