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Lv.1-23
 とにかく、そういうどうしようもなく性悪で最悪で強くて化け物な―――これはまぁもしかしたら第8のみかもしれないけど―――相手を怒らせるような、そんな恐ろしいことを平然とやってのけるミツハさんが、そもそも他地域にまで乗り込む理由は、ミツハさんの担っている仕事に関係がある。
 ミツハさんは『使者(ヴェンダー)』と呼ばれる存在だ。
 これは職種の名称で、まぁ、簡単にいえば『能力』を他者に与えるというか売るというか、そういう仕事だ。
 そもそも能力は生まれつき持っている『先天性能力』と、後に自分の意思で身に付けられる『付加能力』があり、特別枠の能力なんかは前者の最もたるもので、後者は言葉の意味そのまま、元々持っていない能力をある特殊な方法で追加したときに言われる。
 つまり後付けされた能力というわけだ。
 ミツハさんは、その能力を売る―――『付加』する仕事をしている。
 これは能力者の力量が問われる、非常に高度な部類の仕事なのだ。
 というのも、『使者』になるに当たっては、二つの能力が必要になるうえ、色々と難しい調整が必要になるかららしい。
 ちなみに必要な二つの能力というのは、『読取装置(ダウンローダー)』と『書込装置(インサーター)』という能力なのだそうだ。
 『読取装置(ダウンローダー)』は、その名の通り、他者の能力を『読み取る』能力で、能力の情報―――制御系や発動条件、その組成など―――を、貰うというか奪い取るというか、まぁそんな感じの能力だ。
 そして、『書込装置(インサーター)』は『読取装置』で得た能力の情報を他者に『書き込む』能力で、書き込むに当たっては書き込む相手の資質―――その能力がそいつに合っているか、合っている場合はどの程度のレベルに達することができるか―――を見極めないと反動が来て大変らしい。
 反動ってなんだという感じだが、ミツハさん曰く「凄く痛い」らしい。うう、聞くだけで嫌だ。
 とにかく、ミツハさんはその二つの能力―――しかもどちらも最高レベル―――を持っている、凄腕の『使者』として地域を股にかけて飛び回っているのだ。各地域の富裕層に顧客がいて、引っ張りだこらしい。我が身内ながら凄い人だ。
 ちなみに、仕事でのミツハさんの名前は『ルシア』という偽名だったりする。うん、偽名でも綺麗な響きだ。素敵だ。
 ミツハさんは本名で仕事はしない主義らしい。まぁ、地域の無断横断ばかりしているものだから、本名で仕事をするのは無理だとは思うけれども。うっかり捕まってしまったら大変だしな。

「今回の行商は長期過密で大変だったけど、『能力辞書(ディクショナリー)』も大分埋まってきたし、面白いのもみっけて来たぜ。なんかほしい能力あるか?」

 そんな実は指名手配犯なミツハさんは俺や未来にそう話しかける。
 ちなみに『能力辞書(ディクショナリー)』とは、件の『読取装置』で読み取ってきた能力を保管、記録する辞書だ。
 これは、『読取装置』、『書込装置』など、能力を読む能力者にしか備わっていない、目に見えない脳内の辞書のことだ。
 そこにはぎっしり能力の情報が書き込まれているらしい。
 俺には見えないから何とも言えないが、件の能力が高レベルだと載っている能力も多種多様で凄いことになっているらしい。
 それだけ盗んできたってことだもんな、凄すぎる。

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あきゅろす。
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