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Lv.1-22

「…ハァ、不味いことしやがって」

 固まった俺を置いて、未来は呆れ顔で溜息を吐く。
 それにミツハさんは「別に無事だったからいいじゃねぇか」と不貞腐れたように零してコーヒーを啜った。
 そして「むしろ、俺があいつら如きに後れを取るはずねぇだろが」と憤慨する。
 確かにその通りなのだが、やはり、『門番』もさることながら地域の代表者に喧嘩を売るということは、待つ身の俺たちとしては肝が冷えるというものだ。
 だって、俺たちのところで言うヤマトみたいな化け物に喧嘩売るって…お、恐ろしくて想像もできない。怖すぎる。
 『門番』一人だけでも化け物級なのに、そこに悪魔だか鬼だかの代表者がつくんだ、プチッと潰されてもおかしくはない。
 そう考えると、俺のヤマトに対する態度って結構不味いんじゃないだろうかと思うのだが、まぁそれはそれ、ヤマトの自業自得というやつだ。うん、深く考えると駄目だこういうのは。
 ちなみにここ、第8の『門番』は駿河(するが)という。
 こいつは優れた『先読み(バイスタンダー)』でもある。
 『門番』は『門番』としての能力とともに他にも能力を持っているのが普通で、駿河もその例に漏れずに『先読み』の能力者なのだ。
 そして前にも言ったが、『門番』は大抵代表者と行動を共にする。
 それ故に、駿河もヤマトと一緒にいることが多い。そして、ヤマトと無駄に会うことが多い俺も、駿河の姿を見ることが必然的に多くなるわけだ。
 俺からみた駿河の容姿は、まぁ、ヤマトと並んでも霞まない存在感はあるし、ぶっちゃければ整った顔立ちだ。勿論ミツハさんには及ばないがな。
 けれども、その中身はもう手に負えない。駄目だ。相当悪い。
 ヤマトもかなり酷い性格だが、駿河も引けを取らない酷さだ。つまり類は友を呼ぶ。
 二人揃うと酷さは倍増、俺の精神的被害も増悪だ。
 駿河はヤマトが俺を気に入って追いかけ回しているのを知っているから、その手助け―――今日みたいな『先読み』による無駄な助言とかだ―――はするし、俺が一人で歩いているところを発見すれば、小脇に抱えてヤマトの元に『土産』として拉致されるし、とにかくやることなすことが俺にとってはやめてくれということばかりだ。
 駿河曰く「ヤマトがそうしたいんだからそれを手伝うのが俺の仕事だし」とのことだが、本人は俺が嫌がることを嬉々としてやっている節があって―――これは目を見ていればわかる。こいつの目はヤマトと同じだ。同類だ―――本当に性格が悪い。
 最終的にヤマトのせいにしているところも性格の悪さというか狡賢さを表しているような気がする。
 勿論、それに輪かけてヤマトの方が性悪だけどな。
 とにかく、駿河は俺とヤマトの仲を細切れに引き裂いてくれるわけではなく、むしろ嬉々として取り持とうとする。
 俺は嫌がるしヤマトは喜ぶしで駿河としては一石二鳥というやつだ。一度で二度美味しい。俺は全く美味しくないが。
 俺としては、俺に害が及ばないようにしながらヤマトと切り離してほしいものだ。全然仲なんて取り持たなくていい。
 というか、そもそも取り持つべき仲すら存在してないはずなんですけど、というのが本音だったりする。
 そんな俺の切なる願いも一蹴して、最終的に「早くヤマトのものになっちまえば楽なんだよ」と俺の肩を叩いて諭してくる『門番』は、俺の中でヤマトに次ぐブラックリスト―――会いたくない、むしろ関わり合いたくない人物リスト―――の上位者になっている。本当、どうしようもない対だ。誰かどうにかしてくれ。


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あきゅろす。
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