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Lv.1-19

「よし」

 その声は、それまでの重苦しい空気を払拭させるように明るいものだった。
 事実、ミツハさんの纏っていた、俺―――そしておそらく未来にも―――に重い重圧感を与えていた気配は霧散していて、柔らかいそれにかわっている。
 俺はホッと無意識に息を吐いて肩の力を抜いた。
 そしてミツハさんは未来の方を見て何度か頷き、「それでこそ男だぜ未来」とどこか誇らしげに零した。
 俺にはミツハさんの思考回路が掴めない。17年一緒にいるけれども、未だに掴めない。今の会話の中にいったい誇るべきところがあっただろうか、少なくとも俺には分からなかった。
 しかし、そんなところを含めてミツハさんの魅力に俺はメロメロなわけだ。
 だって、よくわからなかったけれども、誇らしげに胸を張るミツハさんの横顔は、やっぱり格好良かったから。
 ミツハさんは続ける。

「まっ、寝座に関して俺は異論ねぇよ。今まで彼方もヤマト相手に頑張ってたみたいだし」

 それに俺も久々に彼方と一緒に生活したかったしな、とサラリと言い放って、ミツハさんは止まっていた食事を再開した。
 豪快に料理を口に運ぶミツハさんに、未来も緊張を解すように「ガキみたいな食い方してんじゃねぇよ」と軽口を零した。
 そして俺は、悶えていた。
 テーブルに上半身を突っ伏して、込み上げる歓喜に震えていた。
 だって、ミツハさんから凄い台詞をサラリともらったのだ。悶えずにどうしろと。
 ちなみにミツハさんも未来もそんな俺に突っ込みを入れない。見事なスルーだ。
 つまりこんな俺の行動は、2人にとっては日常茶飯事なんだろう。急に恥ずかしくなって俺は顔をあげた。
 それに気づいて未来とミツハさんが笑う。

「今日は立ち直りが早いな彼方」

 グリグリと頭を撫でられて、俺は頬に熱が集中する。胸の鼓動が危険な信号を放っている。暴走注意と。

「おい、食いながら喋んな。彼方はミツハなんて放っておいてもっと食え」

 ミツハさんは未来の言い草に「お前も言うようになったな」と返し、未来はそんなミツハさんの言葉を聞き流しながら「ほら」と俺の空いていた皿に料理を取り分けた。
 それに「ありがと」と返して俺も中断していた食事を再開させる。

 まだ温かいそれらは、やっぱり美味しかった。


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