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Lv.1-15
 ちなみに、その恩恵―――時の流れに逆らった現象は『自動的な肉体活性』によるものなのだそうだ。
 これは普通の肉体系の能力―――つまり速く走れるとか高く跳べるとかいう意識して行う肉体活性系の能力―――とは違い、無意識の間に発動し続ける能力らしい。
 大抵、肉体が充実した適齢期―――20代半ばで見かけの成長が止まったように老いを見せないことからそう言われているのだが、その実、この現象、不老は不老でも、『ほぼ不老』が本当のところらしい。
 面倒くさいが正しく言うなら、ほぼ、不老。
 ちなみにその『ほぼ』たる理由は、とにかく長く若い姿のままでいるのは確かだが、それは、ゆっくり、ゆっくりと老いているかららしい。
 つまり、その現象は完全に老いを止めるのではなく、その後の老化速度が常人よりも極端に落ちるだけであり、完全な肉体時間の停止に至らないらしい。だから、ほぼ、なのだそうだ。
 けれども俺にしてみたらほぼってなんだという感じだ。もう不老でいいじゃん。ほぼってなんか中途半端で嫌だ。
 普通より長く若い姿でいられるのだからいいと思うのだけれども、上―――この世界は実力主義なので、恩恵を受ける人間は高レベル能力者、つまり必然的に社会的強者、世界の頂点付近の住人であり所謂上流階級中の上流階級だ―――の考えることは所詮底辺の人間にはわからないものだ。
 まぁ、本当に長生きなのはいいことだと思う。特にミツハさんは美の結晶だからずっとそのままでいてほしいしな。
 ただそれで、同じ時間を生きられないと思うと、少し寂しいけれども。
 それでも、そのミツハさんの姿が変わらないという事実は、つまりはミツハさんが特別な人間だということを示しているようで俺は誇らしく思える。
 本当に強い者にしか現れないその現象に、ミツハさんはやっぱり凄い人なのだと、自分のことではないのに凄く嬉しい気持ちになるのだ。
 俺がそんな気持ちでミツハさんを見上げていれば、当のミツハさんはポンポンと俺の後頭部を軽く撫でて「すげぇ緩んでるぞオイ」と俺を見下ろして笑った。
 俺の頬は、緩みきっていた。
 俺はそれに羞恥心で一杯になる。慌てて取り取り繕うと頬を引き上げるが、そんな俺の行動にますます笑い声が上がる。すでに若干涙目だ。うう、恥ずかしい。

「ま、いいじゃねぇか。つうか俺にも飯くれよ」

 そしてミツハさんは、今度は未来にそう発して、「ほら、ちょっと離れろ」と抱き付いたままの俺に促す。
 俺はそれに「えー」と不満の声を上げながらも素直に従って身体を離した。俺が逆らうはずがない。余程のことでないとな。
 ミツハさんはそのまま不機嫌オーラを放ちながらも料理を取り分けている未来のいるテーブルに近寄って、空いていた椅子に腰かける。俺もそれにならって元々座っていた椅子に戻った。

「で? なに話してたんだよ未来」

 ミツハさんは座って未来の方を見るなりそう言った。
 それに俺は、そう言えば未来の家に住むとかそういう話をしていたんだっけと少し前のことを思い出す。
 残念なことに、ミツハさんの出現に俺の脳味噌が軽くその記憶を消去しかけていたので、俺は未来に対して少し罪悪感を抱いた。
 ミツハさんが絡むと他のことが脳内から吹き飛ぶのは俺の悪い癖だった。わかっていてもどうにもならないのが痛いところで、本当にごめんとしか言いようがない。ごめんな未来。


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