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Lv.1-14

「まったく…そういうところもかわってねぇし」

 ミツハさんはまた小さく笑って、「未来の仏頂面もいつも通りだしな」と続けた。
 そこにはどこか面白がっているような色が含まれているような気がしたが、すぐに「一番かわんねぇのはあんただ」という、未来のやたら低音の不機嫌さが滲み出た声が響いてきたので俺のそんな思考も霧散した。

「まぁそうだろな」

 そして未来の言葉にミツハさんはそう飄々とした声音で返す。
 俺も内心、確かに、と思う。一番変わらないのはミツハさんだ。あの過去という確かな証拠の残る写真の中で、唯一変わらないのがミツハさんだ。
 俺も、未来だって、それなりに変わっている。俺なんかは身長だって随分伸びたし、少しは子供っぽさが抜けたと思う。ずっとずっと、2人の隣にいられるようにと努力してきたのだから。
 未来だって、あの写真よりもずっと精悍になっている。格好良く変わっている。
 けれども、ミツハさんは変わらない。少なくとも見た目は、まったく変わらない。
 それを確かめるように俺は抱きついているミツハさんの胸元から顔を上げた。そこには、やっぱり綺麗で格好いい、直視するには心の準備が必要な整った顔がある。それは、どう見ても写真の中のそれと一緒だ。まさに未来の言葉通りの姿、変わらない姿。
 だがそれにも、ちゃんと理由がある。そう、極一部の人間に起こる特殊な、現象だ。
 そもそもこの世界には能力という不平等なものがあるが、それに輪をかけて不平等なものがある。それが『血統』という、どうしようもないものだ。生まれは選べないのだから。
 そしてその尊いとされる『血統』は、2つある。
 それが、この世界を支配する能力者たちの大元締め、『不破(ふわ)』と『不死眼(しなずめ)』という一族なのだ。
 その血が強い―――所謂直系というやつだ―――輩が、その『極一部の人間』の約8割に当てはまる。そして残る2割は、それらの血に関わりない一般の能力者だ。
 けれどもそいつらに共通するのは、皆飛び抜けた実力者だということだ。
 特に不破と不死眼の血は非常に強い能力者を生む。故にこの世界に散らばった高レベルの能力者は大抵このどちらかの一族の出であることが多い。なかにはその血に関わりなく、それを持つ者たちと遜色ない能力を有しているやつもいるけれども、それも極一部に過ぎないのが現状だ。
 ちなみに言葉にしたくもないがこの第8最強の男、更沙ヤマトは不破に近い血を組む一族だ。つまり、『更沙』は不破の分家のようなものらしい。完全な直系ではないけれども、不破の中でも高位にいる一族なのだそうだ。あまり深く知りたくないけれども、その不破と不死眼の一族の話は一般常識レベルの内容なので、俺ですら知っている。知っていてもおかしくない。あくまで常識なのだ。知ろうと思って調べたんじゃないからな。
 とにかくそういう強い能力を持つ者たち、その中でもさらに選ばれた者たちのみに特別な恩恵が授けられるのが、この世界の不思議なところだ。
 そしてその授けられるもの、それが老いない身体―――所謂『不老』らしい。

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