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Lv.1-11
 そんな思いで料理を口に運ぶ俺に、行儀悪く―――いや、かき込んでいる俺に言われたくないだろうけれども―――テーブルに肩肘を立てて皿へ手を動かしていた未来が、ふとその手を休めて話しかけてきた。

「…なぁ彼方」

「んー?」

 口の中が料理で埋まっている俺は籠った音で答える。未来は気にせずに続けた。

「お前いっそのこと、むこうの寝座引き払って俺んとこに住まねぇ?」

「んぐ?」

 未来の唐突な提案に俺は料理を口に運んでいた手を止めた。皿から顔をあげて前に座る未来を見つめる。

「やっぱお前はまだ独り立ちするには早いって。ミツハには俺から言うからさ、そうしろよ、な?」

 未来は真剣な面持ちで言葉を紡ぐ。それに俺は相槌も打たずにただ見つめるだけだ。

「こっちの方が住み心地もいいし、飢えもしない、そうだろ?」

 まるで子供に言い聞かせるような口ぶりに、俺は口内に残っていた料理をごくんと飲み下して口を開いた。正直、怒っていた。

「…馬鹿にしてんのか? そりゃ、俺はよわっちいしホント底辺の人間だけどな、ミツハさんに認められてやってみろって言われたこと投げだすのは嫌だ」

 俺は精いっぱい凄みを利かせた声音でそう未来に言い放つ。
 そう、俺の自立生活は、ミツハさんに「荒波に揉まれてこい」と言われて始まったのだ。
 それはつまり、ミツハさんからの試練だ。それが『できる』と思われてこその言いつけに違いない。俺はそう思っているし、そう思ったからこそ必死で生活していたんだ。
 ―――いつか、ミツハさんと…そして未来と、ちゃんと『家族』なんだと胸を張って言えるように。
 それなのに、未来は俺の決意も無に帰そうとしている。
 未来は俺の言葉に困ったような表情で、しかしそこに揺るぎない決意をこめて言う。

「そうはいってねぇよ。ただ、俺の寿命がいくつあっても足んなくなるんだよ。心配で彼方を独りにできねぇの」

 それは、つまり今日のようなことがあるから、か。
 俺はすぐにそう思い至ってグッと奥歯を噛みしめた。
 それを言われると厳しい。確かに、今日は危なかった。未来があと少し遅かったら、あの変態の餌食だった。それこそ、想像したくもないあれそれで、俺は憤死していたかもしれない。むしろ変態の奴隷に。あ、嫌な汗が出てきた。
 けれども、俺とてここまで来たら後ろには引けない。変態が怖くてここで暮らせるか!


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