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Lv.0-35
 ヤマトは口を尖らせて「だって」と続けた。

「昨日、彼方ってばまたあいつとくっついてただろー」

 あいつって誰だ、とは俺は聞かない。昨日、くっついてた、で大体想像できる。―――『あいつ』だ。

「でも仕事中は話しかけるな近寄るなっていうから律儀に守って見てただけだったんだからさー。どっちかっていうと褒めてほしいなー」

「見てんのもやめろよ」

 俺はヤマトの言葉にそう主張した。なに、このオープンストーカー宣言。鳥肌が立った。
 そんな俺の主張も軽くスルーして、ヤマトはまた「だってさ」と言う。

「あの『仕事』なら昨日で十分終わるはずだっただろー、なのに終わんなかった。俺は待ってたのにー」

「悪かったな仕事ができないやつで」

 だけれども、待っていてほしいなんていってもいない。しかも、待っていたら待っていたで、つまり『こういうこと』になっていたってことだろう。自分勝手すぎる。我が道を驀進しすぎだ。

「ん、でもそういう不器用なところも好きー」

 …ヤマトの言葉に耳を傾けるのは止めよう。なんだか馬鹿らしくなってくる。呆れた俺の気持ちが伝わったのか、ヤマトは「あぁでも本当に良かったー」と再度言った。

「この壁のこと知ってたら、彼方ってばこっちに来なかっただろうし。でももし知らなければ、きっとこの道選ぶと思ったんだー、よかった、当たって。俺って本当にラッキー」

 本当に嬉々としたヤマトの表情が、今の俺には恨めしくて仕方ない。なんなんだ、計算ずくなのか、それとも本当に『幸運』(ラック)の持ち主なのか。俺はだんだんわからなくなる。
 けれども、今言えるのは、唯一つ。

「ふざけんな!」

 その一言だ。それに尽きる。機嫌が悪いからって無駄な破壊活動をするな。ついでにストーカー行為もやめてくれ。
 それにヤマトは「えー」と零す。

「酷いなー、ふざけてないのに。まぁどっちかっていうと、本当は裏技使ったんだけどさ」

 …は?
 俺はヤマトのぶっちゃけ話に思わず気の抜けた顔をしてしまった。
 ヤマトはにっこりと笑んで、うん、と頷く。

「うちには優秀な『先読み(バイスタンダー)』がいるしー。その助言もあってさー。それに間が空いちゃったから俺も本気だったんだー」

 間が空いたって、あれか、女々しくも数えていたあれか。『1か月と12日』ぶりっていうあれ。俺としたら永遠に空きっぱなしでも一向に構わないんだが。
 ちなみに『先読み(バイスタンダー)』はその名の通り未来を読む稀有な能力者のことで、その人物を俺は知っている。だって、よくヤマトの隣にいるからな。でもそんなのはどうでもいい。そんなの使うなんて卑怯だ。


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