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Lv.0-30

 慌てて再び能力を展開し、俺はクソッと悪態を吐いて目前の粗大なコンクリート片を飛び越える。
 若干目算を誤って滑り気味になった片足に、必死に力を込めて捻らないようにしながら、歯を食いしばって地を蹴った。
 それでもやはり着地の際に僅かな痛みが走って、俺は舌打ちする。痛いのは嫌なんだ。
 それでも直ぐに反対の足を出して前に進む。
 そして俺は諸悪の根源の―――今も飄々とした表情で俺の名を呼んでいるヤマトの姿をサーチによって脳裏に浮かべ、怒りに任せて地を蹴る。それにまた痛みが足首に走って俺の怒りはループする。最悪だ。
 俺はヤマトの位置情報を逐一確認しながら安全性の高い逃走経路を選んでいく。
 そして同時に、どこからか湧き上がってくる理不尽な憤りに腹の底を熱くさせた。

 ―――俺にもあいつと同じくらいの力があれば、こんなことにはならなかったのに。

 そう、そして、もしなったとしても無事逃げ遂せられるだろうし、むしろ返り討ちは決定だ、と。そんな思いが熱を持った脳内を行きかう。
 けれども、現実は何時だって俺が痛い目を見て終わるんだ。誰がヤマトにあんな能力を持たせたんだ。不平等すぎる。
 しかし、俺にもその能力を寄越せと、そういったところで―――勿論いうのは自由だ。俺はしょっちゅういってるし思っている―――生まれ持ったものは覆すことが出来ない。
 強者のみ生き残ることができる、そんな世界そのものがいけないんだ。その秩序が不平等すぎて、俺のような最下層の人間には優しくない。
 それでも、俺はそんな世界の中で必死に生きていて、そしてこれからも生き抜くためには、この危機を乗り越えなければならないんだ。鬼男、悪魔、最低、変態の極悪人に捕まっていいようにされるなんて、以ての外だ。
 俺は決意も新たに地を蹴る脚に力を込めた。
 そしてその時、再びヤマトの気の抜けたような声が俺の鼓膜を震わせる。

「かーなーたー、かーなーたー、かーなーたーどーこーだー?」

 …その間延びした音が、俺の名前だとは思いたくない。
 俺は米神を引き攣らせながら再度思った。

 ―――世界は不平等だと。

 だってあんなふざけた奴が最強なんて許せない。やっぱりその力、俺に寄越せと、出来ないとはわかっていても思ってしまう。だって、あんなふざけた奴が最強なんて! 俺の怒りはまたもやループする。というか、ヤマトに関しては基本的に怒りが治まることはない。存在自体が俺の怒りの象徴だからな。
 そして俺は、そんな止め処ない怒りに任せて、ヤマトの声から少しでも遠ざかるようにと、鼻を刺激する澱んだ空気を吸い込んでヤマトのいない方へと駆け出す。
 制限時間は残り6分。
 死ぬ気で逃げるしかない。

 そして、冒頭に戻るのだ。





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