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Lv.2-50
 俺はただ駿河に抱えられながら成り行きを見守るしかない。俺の命の綱である駿河はやってきた『監視者』の一人だろう男を振り返ることなく「準備は?」とだけ問うた。

「既に第2部隊が到着しています」

 男もそう淡々と報告し、そして数秒、間を置いてから「…包囲も完了しました」と駿河に返した。駿河はそれに「よしよし」と零して高い屋根の縁に片足をかけた。俺はその行動に情けないがビクリと震えてしまう。それはやはり俺を抱える駿河にも伝わったようで、ハハッと笑われた。こいつ頭から落ちればいいのに。

「じゃあ俺もそろそろ動くからお前も配置につけ、…万が一にも逃がすなよ?」

 駿河がそう言えば、背後にいた男は「了解しました」と返して気配を消した。そうして、この屋上には俺と駿河だけになる。

「さぁーて…目下にはネズミちゃんが3匹、…『遮蔽(クローカー)』系の能力者と『爆裂(バースター)』系の能力者、と。…あとどんなのが出るだろうなぁ」

 駿河は言ってクックと人の悪い笑いを浮かべる。そうか、この目下の、目に染みるような砂塵がなかなか晴れないのは能力のせいなのか。目晦ましってやつか。俺は初めて見る能力に興味を持った。『爆裂』系の能力は怖いから見たくはないけれども。

「カナちゃんいるし、俺も久々に頑張っちゃおうかな」

 駿河は言って「ちなみに今回の件は俺よりヤマトのが頑張ってるんだからねー」と付け加えた。いやそんな情報はいらない。というか、こいつはなんて悠長なんだ。俺は今すぐにでも逃げたい。相手をするなら俺を解放してからにして欲しかった。
 何時下にいるであろう敵から襲い掛かられるかわからない状況に切羽詰った俺は、抱えられた身分ではあるが「オイ!」と駿河に声をかけた。

「うん?」

 駿河は「なぁに」と抜けた声で俺を見下ろした。俺は構わず続けた。

「もう俺のこと下ろせよ! そんでもってなんかやるなら俺のいないところでやれ!」

 ついでに安全なところまで連れてけ! と叫べば、駿河は「馬鹿だなーカナちゃんは」とまた笑った。

「俺といるより安全なところなんて、他にはヤマトのとこしかないよ? そうしてくれると俺は嬉しいけど」

 俺はその返答に目を見開く。…いや、どっちかって言うとそっちのほうが危険な気がするのだけれども。駿河は俺の反応など気にした様子もなく「今日のヤマトへの手土産はネズミ3匹の首とカナちゃんで決まりだね」と楽しげに呟いた。さらりと恐ろしいことを言った駿河にぞわと俺は鳥肌を立てる。俺はさっと口を閉じて固まる。駄目だ、こいつとは会話が成り立たない。
 しかし、こんな悠長な会話をしているにもかかわらず、下の敵は一体何故手を拱いているのだろう。静かすぎて逆に恐ろしい。

「な、なぁ…なんで下の奴ら出てこないんだ…?」

 警戒しているにしろとりあえず怖いので俺は駿河に問う。こいつにしか問える相手がいないのがつらい。もう誰か助けて。


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