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Lv.2-45
 背後から怒声が追いかけてくる。人の駆ける足音も聞こえてくる。振り返ると鬼の形相の男たちが迫っていた。
 ―――まずい、やばい。
 一本道が続く脇道だから、隠れる場所もない。逃げ足に自信のある俺でも、流石に一仕事終えたうえに、ただの一本道での追いかけっこには正直自信がない。俺は開けた土地に強いのだと主張する。
 案の定、背後から段々と罵声が近づいてくる。過激な言葉が飛び交って、聞くに堪えない卑猥な言葉が俺の背中を叩いた。
 けれども、一本道ももうじきおしまいだ。もう少し、あと少し。

「っぎゃあ!」

 それなのに、あと数メートルの距離で出口なのに、俺の身体は悲鳴を上げてその場に倒れこんだ。
 一瞬の出来事だった。
 身体を走り抜けたのは痺れるような激痛で、筋肉が弛緩する。それに、男のうちの誰かが能力を使ったのだと悟る。
 しかし、そう思っている間に、男たちの足が俺の脇腹を蹴り上げてきた。

「ぐぁっ…!」

 無様に転がされる俺に、男たちは卑下た笑い声を上げた。痛みに涙が浮かんでそれでもこれ以上悲鳴を上げないように必死になる。

「ガキが面倒かけやがって」

 一人の男が俺の髪を掴んで引き上げる。本気で痛い、頭皮が千切れそうだ。口元に血を滲ませながら俺は苦痛に歪む顔を必死で見せまいと首を捩る。
 その動作が気に入らなかったのか、男が俺の頬を拳で殴った。

「ぐっ…!」

 また口内が切れた。鼻血が出る。口腔内に広がる血臭にますます気持ちが悪くなった。

「とりあえず金持ってるか探せよ」

 俺を掴んでいる男とは別の男が服のポケットから俺の財布を引き抜く。それ、俺が今日汗水垂らして働いた金なのに。悔しくて睨めばまた男に殴られた。

「ッチ、これっぽっちかよ」

 男が吐き捨てる。それっぽっちでも俺の金だ、そういうなら置いていきやがれという思いが湧き上がるが、今それを言えば益々手酷く暴行されるだろう。俺は悔しく思いながら唇を噛み締めた。
 弱い自分が恨めしかった。こんな下種に手も足も出ない自分の弱さが腹立たしかった。

「しかたねぇ、おい」

 3人目の男が他の男に声をかけた。途端、俺を拘束していた男が俺の服を剥ぎにかかる。俺は目を見開いた。それが意味するところなんて、日を見るより明らかだ。

「っふざけんな!」

 こんな場所で、こんな奴らに強姦されてたまるか。
 俺は大分痺れの取れてきていた腕や足を我武者羅に動かした。それに男は舌打ちして再び俺に拳を上げる。
 それに、俺は反射的にヒッと息を飲んで次に来る衝撃に目を瞑った。避けることなど、できない。


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