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Lv.2-36
 俺はそれを確信して一歩後ずさる。
 そもそも関わりたくない人間の一人でもある天敵の対―――駿河である上に、どうやら先程までの騒動にも関わっているようなので、ますます俺としては足が後ろに下がった。というか、今すぐにでも踵を返して玄関を潜りたかった。いや、今からでも遅くはない。向こうは俺の推測が正しければあの場所からこちら側には来ることができないのだろうから。
 俺はそう思い至って身体を反転させようと踵に体重を乗せた。体軸を捻って身体を反転させる。そしてぐるりと光に背を向けた。
 そのとき、俺は肩をグイと引かれた。身体が傾ぎ、背後によろめく。それに驚いて「うわっ」と声を上げた。
 そのまま何事だと首を背後に回してみれば、薄暗い視界の中で金色が煌いた。薄っすらと浮かぶ輪郭と、高い身長、そしてその人物は「彼方」と俺を呼んだ。未来だった。
 ちなみに未来のその向こうではまたあの光が揺れている。駿河はある意味ヤマトよりもうざったいやつだ。

「み、未来か…びっくりした」

 俺はホッと胸を撫で下ろして呟く。
 そうだ、ここは俺たち家族だけが足を踏み入れられるようなのだから、未来かミツハさんかしかいないのだけれども、追いかけられるという恐怖を刷り込まれた俺には、今も馬鹿みたいに光を振って何かを訴えている駿河がここまでやってきたのではないかという妄想にとりつかれていたのだ。
 そもそも、もしこの場所でなければ、本当にありそうで怖い。というか、悔しいがあいつほどの実力者ならこの程度の距離なんて俺が一歩歩くより早く詰められるかもしれない。まぁ所詮想像だけれども。
 俺がそんなことを思っていると、背後で未来がハァと息を吐いた。

「ちゃんと待ってろって言ったのに…まったく…」

 未来はまたハァと溜め息を吐くと、俺の肩から手を離して今度は背を押した。家の中に戻れということだろう。
 少しその扱い方にカチンときながらも、出てきてしまったのは俺なので出しかけた文句を引っ込めて渋々前に足を動かした。
 俺はまたチラリと背後を振り返った。駿河はまだあそこにいるのだろうかと不意に気になったからだ。
 けれども、それは未来の身体に遮られて、結局確認することは適わなかった。
 そして再度玄関を潜った俺は、早速未来を問い詰めることにした。

「で、アレなんだったんだよ?」

 駿河がいたみたいだけど、と俺が続ければ、未来は渋い顔になる。その反応はどういう意味なんだ。
 俺は眉を寄せて「未来」と名を呼ぶ。そうすれば、未来は「とりあえず中まではいれよ」と俺を玄関先からその先に促す。

「飯食いながら説明するから…ほら、腹減ってんだろ?」

 そういう未来は、どこか酷く疲れているようだった。俺は自分の空腹よりもそちらのほうが気がかりだった。

「飯は後ででもいいって、なんだよ、どうかしたのか?」

 俺はそう未来に問う。あの場でなにがあったのだろうか、駿河がいたのも気になるところだ。
 『監視者(カラーズ)』が出張るのは想定内だけれども、『門番(センチネル)』まで出てくるのは少しおかしいことだと俺は思う。
 いくら俺が、あの忌々しいヤマトの、第8の代表者の、所謂お気に入りでもおかしいだろう。
 なにが今、俺の周りで起きているのだろう。俺はそれが知りたかった。


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