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Lv.2-34
 とはいえ、未来についていっても足手纏いにしかならないのはわかりきっているので、俺は窓に張り付く形で成り行きを見守ることにした。
 閃光を放つような能力は、電撃系か爆発系の大変危険な能力のことが多い。
 俺のレベル2程度の『物体浮遊(フロート)』ではどうにもならない。歯も立たないというか立たせる前にやられているだろう。
 そもそも俺の『物体浮遊』はそれを操作する能力と合わさり、かつ高レベルになれば攻撃系と言って差し支えない能力なのだが、レベル2では攻撃系などと名乗るのが恥ずかしいくらいだ。所詮俺はその程度の能力者である。
 そんなことを思っている間にも、また俺の視界の中で激しい光が生まれた。
 暗闇に包まれた外界に眩いまでのそれは、それだけ威力の大きな爆発なのだろう。
 しかし、不思議なことに俺たちの住むこの寝座までその衝撃は来ない。その爆音だけが鼓膜を襲ってくるのだ。
 窓の薄いガラスがビリビリと震えたが、割れるには至らない。
 勿論、物理的な影響はないとしても、それだけで十分に俺としてはダメージを被っている。主に耳というか頭が痛い。
 そんな状態の俺でもわかるのは、やはり伝わる衝撃がこんなにも軽微ですんでいるということの異常性である。
 距離はざっと150メートルかそこらしかないはずなのに―――ちなみに何故距離がわかるかといえば、今爆発が起きているその場所は、俺の記憶に眠る忌々しい鬼、悪魔、もとい変態が俺を迎えに、否、かどわかしに来た場所と同一だったからだ。あそこは、俺の『熱源探知(サーチ)』のギリギリ許容範囲、つまり150メートルなのだ―――異常だ。
 視界の中で次々に周囲の廃ビルが崩れているというのに、たったそれだけの距離に建つこの寝座が崩れないのは普通に考えておかしいことだった。
 今も、窓から見える外界の中で比較的頑丈で高いビルが崩れた。
 それは俺がよく名も出したくない人でなしの鬼男、ヤマトの追跡から逃れるために身を潜めた場所だった。
 あそこは他と比べて基礎が確りしていたから閉じ込められる危険性がなくていい隠れ場所だったのに、と俺は奥歯を噛む。
 いや、今はそんなことを惜しんでいる場合ではない。
 俺は抗争だか破壊活動だか知らないけれども迷惑なそれらの激しさを本格的に知る。
 本当になにが目的なのか、迷惑極まりない。様子を見に行った未来のことが気がかりだった。
 これだけ派手に人為的な破壊が引き起こっているのだから、おそらく『監視者(カラーズ)』の連中もそろそろ駆けつけるとは思うが、ここが北地区だという背景がその希望を翳らせる。
 これが上層階級の住まう東や西ならここまでなる前に鎮圧しているのだろう。格差がありすぎると俺は小さく舌打った。
 未来が心配だった。
 大丈夫だろうか、大丈夫だとは思うけれども、やはりその場にいけない俺は心配しかできない。信じていても、喪失の恐怖は何よりも大きかった。
 窓に張り付いて俺はなおも外を伺う。
 それにしても、本当に何故、俺のいるこの場所は無事なのだろうか。
 俺は再び脳内に舞い戻ってきた疑問を、今度こそ拾い上げた。
 よく考えてみれば今も何か緩衝材でも間に置いたように無事なこの寝座は、そういえば一度としてヤマトの襲撃を受けたことがない。
 ちなみに俺が自立生活の中で借りていた寝座は幾度となくヤマトの襲撃というか不法侵入を受けていた。
 ヤマトは俺がこの元の寝座に戻っていることを知っているはずだけれども、一度としてこの場所に足を踏み入れていないのだ。
 それは、未来やミツハさんがいる可能性があるからといわれればその通りだけれども、あいつがそのくらいで怯むとは思えなかった。
 事実、未来にもミツハさんにも平気で喧嘩を売っているのだから。


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