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Lv.0-2

 ちなみに、この鬼ごっこ、俺にとっては全く持って不本意なものだった。
 というのも、俺が始めたいといって始めたものではなかったし、むしろ一方的に始まったといっていい。



 そう、それは、もう、突然始まった。








「げ、」

 俺から直線距離でざっと50メートル先に現れた人影に、俺はあからさまに嫌そうな声をあげた。
 反対に、相手は俺が気付くより早くこちらに気付いていたようでこちらに長い手をブンブンと振ってくる。

「おーい彼方ー! 久しぶりだなー!」

 そう大声で俺の名を呼びながら一歩一歩近づいてくる相手は、遠目でもわかるほどの美形だった。それはもう、その周りだけが輝いて見えるような美形。
 長身で引き締まった細身の身体に、赤茶色の特徴的な髪が風に靡いていた。
 何処かふわりとした猫のような容貌のその男は、服装も奇抜で蛍光ピンクのパーカーとジーパンを纏っている。別の意味で目が痛くて仕方ない。

「1ヶ月と12日ぶりじゃんかー!」

 振っていた手を下ろし、そのまま両手を件のピンクのパーカーのポケットに突っ込んで、そう相変わらず叫んでくる男に、俺は惚けるよりも顔を引き攣らせた。こめかみを冷たい汗が流れ落ちるのを俺は感じた。

「更沙(さらさ)ヤマト…」

 俺はその男の名前を小さく吐き捨てる。
 よりによって最悪なやつに出会ってしまったと悔いるけれども、それも今更だ。
 更沙ヤマト、それが男の名前で、そして俺の天敵だ。
 というのも、何故かヤマトは俺を見ると追いかけてくる最悪な人間だからだ。むしろ変態というか。
 自分で言うのもなんだが、俺の容姿なんてそこらへんに転がっている石ころと同じで何の変哲もない平凡顔だ。
 強いて特徴を挙げるなら、俺の年齢を17歳と言えば「本当に?」と訝しがられる若干童顔なところがそれに当たるかもしれないが、所詮その程度の顔だ。
 自分でざんばらに切った黒髪に、どこを見ているのかわからないといわれる黒瞳。
 背だって低くはないが高くもない。影が薄いわけではないが、特に強いわけでもない存在感。
 とにかく平凡。
 ああ、でも逃げ足は若干自信ありの俺。
 そんな俺を追い掛け回す美形の変人は、しかし必ず第8最強の、という形容がつく男だった。

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