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Lv.0-12

「何か言えって」

 再度、ヤマトは言う。
 昔一度、このヤマトの言葉に腹が立って、喋りたくもないけどとりあえず『何か』なんて鸚鵡返しのごとく口に出したこともあった。
 あったけれども…ああ、思い出したくもない記憶が蘇ってくる。
 あの時のヤマトは「あんまり焦らすなよー」と言って前置きもなく強姦体勢にはいったものだ。…恐ろしいことにそのまま最後まで致されたわけで、最悪だった。血塗れだったし。件の俺の可哀相な器官が。まぁ、端的に言えば俺の尻の穴が。
 他にも噛み傷や切り傷なんて数えられないくらいで、血はどばどばで流血もいいところだった。
 その上、ヤマトの出しやがった無駄にドロドロした精液が顔やら腹やら背中やら、勿論流血していた尻の穴にも溢れていて、その気持ち悪さといったら後にも先にもあの時が一番だ。
 全てが終わった後、悔しさと怒りと無力感で舌噛み切って死んでやろうと何度も思った。
 それは、他の要因もあったが。
 というのも、当時持っていた服の中で唯一、自分では手に入れられない高価なそれも駄目になったからだ。
 安い奴だと思うなよ。
 だってそれは―――俺の宝物だったんだ。
 俺の世界で一番大好きなひとからもらった、初めてのものだったんだ。
 だから、ヤマトへの殺意と、それを叶えられない自分の無力感で死にたくなったんだ。
 だけれども、そうしなかったのは、そうできなかったのは、結局は俺が臆病者で痛いのが嫌な人間だったからだ。
 死んだ後どうなるのかはわからないけれど、死ぬときほど痛いこともないのではないかと小心者の俺を恐怖心が思い留まらせた。
 そしてそんな俺を、ヤマトは何度でも好き勝手に強姦するんだ。殺さない限り、俺が自ら死ぬことはないとわかっているから。
 勿論、流血も過ぎれば失血死に繋がるけれども、ヤマトがそんな失態を犯すことなどあるはずもない。
 例えどれだけ泣き叫んでやめてくれと懇願したところで、例の口調で「可愛い可愛い」と繰り返すだけでやめてもくれない、畜生、もとい鬼男、いやいや、ヤマトは、腹が立つことに治癒能力も高レベルだったのだ。
 俺に流血するほどの裂傷やら擦り傷やらを作っても、終われば必ず治していくという不可思議な行動を繰り返す。
 やりっぱなしにはしないのがせめてもの救いだけれども、むしろしないでほしいと思うのはいけないことだろうか。
 だって、治されても痛いものは痛いし、悔しさが痛みと共に消えるわけでもない。
 切り裂かれた俺の服も戻るわけではないので、最初から俺はヤマトと盛りのついた獣みたいなセックスなんてしたくない。
 いや、そもそもこれってセックスなのか? 暴力が行き過ぎただけのような気もするんだけど。
 とにかく、振り返りたくもない同じ徹を踏む前に、俺は渋々ながら口を開く。

「…能力解けよ、気持ち悪い」

 淡々とそう言葉を紡げば、彼方は「はは」と笑って素早くちゅうと俺の唇に吸い付いて、さっと離れていく。くそ、次ぎやったら噛んでやろうと思っていたのに。

「だって解いたら彼方逃げるだろー? それじゃ寂しいじゃん」

 じゃんじゃない。
 それが普通の人間の―――いや、まぁだから俺みたいにヤマトを嫌ってる人間の―――反応だ。
 一刻も早くこの悪魔から逃げ出したい。神様がいるなら、土下座でも何でもするから、俺からヤマトを切り離してください。


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あきゅろす。
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