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Lv.0-11

「彼方ぁー何か喋れって」

 詰まんねーじゃんと駄々をこねる子供のように口を尖らせ、容赦なくグイグイと髪を引っ張るヤマトは、もはや暴君だ。その毛穴から毟り取られそうになる髪の痛みに俺は涙を眦に溜めた。
 情けないけど声は我慢できても、涙まで我慢するなんて出来るはずがない。
 俺は、辛いことも痛いことも、理不尽なことにも弱いただのちっぽけな人間でしかない。平凡人だ。我慢して「こんなの痛くも痒くもねぇよ」なんて格好良く言えるはずがない。だって本当に、滅茶苦茶痛い。

「なぁ彼方ー、もっと痛い思いしたいわけ?」

 そしてヤマトはそんな言葉と共に、俺の腰に回していた手をスルスルと下げて、安っぽいジーンズの生地の上から尻を撫で上げてきた。薄い尻の肉を揉み、そのまま中指を尻の肉の割れ目に沿わせて、意図的な動きで何度もグリグリとそこを―――俺の尻穴を、擦る。

「ッヒ…ッ」

 思わず引き攣るような声を上げれば、ますます執拗にそこばかり狙って指を動かしてきた。穿つような動きは、卑猥すぎて言葉にもならない。
 そこは、件の『遊び』によって既に何度となく傷つけられている場所だ。無理矢理ヤマトの性器で押し拡げられて、何度となく精液を吐き出されて、嫌だと抵抗してもまた無理矢理ぶち込まれて、とエンドレスな可哀相な器官だ。
 最下層、低レベルの俺だって一端のプライドとか貞操観念とか、そういうのは持っているから、ヤマトのする行為は俺を酷く惨めにする。
 ヤマトのするそれは、愛なんてあったもんじゃない。好意なんて、嘘だ。だってそれは暴力を伴った陵辱でしかない。もしくは、ただの暴力のときもあり、反対の時もある。どっちがメインなのか全くわからない、そんなヤマトの遊びは、今回も発動するらしい。そう、自分勝手に。
 そしてそんなヤマトは、俺の後頭部にあてていた手の位置が変えて、喉を反らす形になったのをいいことに、無防備に晒されている俺の喉元を舐め上げてくる。ザラザラとした舌の感触が喉仏を行き来して、無意識に俺は気道を締めて息を詰めた。

「や、め…ッ」

 やめろ、と言おうとした唇は最後まで動かすことが出来ずにグッと噛み締められる。喉元から段々降りてきた唇が、舌先が、鎖骨の窪みに達して軽く歯を立ててきたからだ。
 これまた安っぽい―――しかたない、だって低所得者だなんだから―――薄いシャツ越しにも、俺の可哀相なくらい恐怖で大爆走している心臓の音が聞こえるのではないか。聞こえているなら、可哀相だと思って止めてくれはしないだろうか…いや、ないか、そんなこと。
 どう内心毒づいたところで、力が抜けて全体重がヤマトの腕にかかっている俺は、何もできはしない。薄いジーンズの生地越しにも指の感触が嫌に身体の芯を駆け抜けていく。舌先が通った後の唾液が冷える感覚が、気持ち悪さを助長する。ゾワゾワと、鳥肌が止まらない。


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あきゅろす。
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