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Lv.0-8
 そして今、ヤマトの人形に成り下がっている俺は、『絶対者』であるヤマトによって、「眼、動かしていいよ」という言葉に、ようやく瞬きを許されて必死に乾いた目を潤そうと何度も瞬きを繰り返していた。
 パチパチとそれを忙しなく繰り返す俺に、ヤマトは綺麗な顔を綻ばせてちゅっちゅと何度も唇を寄せてきて、俺は邪魔をするなとばかりに眼球を向ける。
 けれども、危うく目を舐められそうになって慌てて視線を外した。ああ、危ない。

「彼方泣いてるしー、ちょー可愛い」

 可愛いって何だこの野郎、と言ってやりたい。そして言ったついでに殴り倒してやりたい。
 涙の跡が残る目尻から頬を舌で舐められた挙句、後頭部に回したままの指で俺の野暮ったい黒髪を梳かれ、それによって見え隠れする俺の無防備な耳朶に歯を立ててきた。
 噛み切られるんじゃないかと内心気が気でない俺を知ってか知らずか、ヤマトは舐めて吸って軽く歯を立てるという猫の甘噛みにも似た行為を繰り返す。

「彼方さー、耳、好き?」

 好きってなんだ好きって。
 それが噛まれたりするその行為をされることを意味するのなら、断固として答えは『No』だ。もう鳥肌立つくらい大っ嫌いだ。
 それなのに、それなのに。

「真っ赤になってるしー、可愛い」

 なにを誤解したのか、この男は反対にとったらしい。というか、否定も肯定もなにも、動けずにいる俺に出来ると思っているのか。それとも、有無を言わさず、黙秘を貫かせて勝手に解釈しようという魂胆か。後者のような気がするので恐ろしい。ヤマトは確信犯だ。
 そしてそんなヤマトは、俺の腰に回したままの腕に力を込めてグイと下半身を押し付けてきた。意図的になにかが押し当たるんですけど。

「やばいってー彼方可愛すぎ、俺我慢できなくなるだろー」

 それで我慢しているつもりだったのか、と思わず尋ねたくなる。
 けれども、ふざけたヤマトの悪戯は止まることはなく、むしろ悪化の一途を辿っているといって過言ではない。
 身体は動かないが、身体の感覚や思考の管制は俺自身にあるから、もどかしさ爆発だ。ぶち殺したい。実力的にできないけどさ。
 せめて、今の状況を打破できないかと視線だけを辺りに彷徨わせる。もしかしたら、万が一だけども、どっかから救いの手が現れるかもしれないし。まぁ、最強のヤマトに逆らってまで俺を助けてくれる人間なんて、まずいないだろうけど。極一握りを除いては。
 そんな俺の行動にちゅっちゅと口づけを繰り返していたヤマトが気づき、小首を傾げて尋ねてくる。それキモイ、やめてくれ。

「んー眼、きょろきょろしちゃって、不安? 」

 不安というか、どうにか助かる手段を探しているところなんだけど、という俺の意思が通じたのか通じてないのか、ヤマトは「変なこと考えてちゃ駄目だよー?」と笑った。


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