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Lv.1-44

「カナタちゃん」

 けれども、それをこの男は気に入らないみたいだ。
 俺の名前を俺の許可なく呼んで、ギリッと俺の手首を握る指の力を強めた。俺は痛みに眉を顰める。
 一見細身の男は、容赦ない力を秘めていたらしい。嫌な奴に捕まってしまったと俺は内心舌打ちした。

「俺は、聞いてるんだけど?」

 男は顔を近づけてわざとらしく言葉を区切り区切り放つ。その威圧感に俺はゴクリと口内に溜まった唾液を無意識に嚥下した。近くなった距離に、嫌な空気が流れる。

「ねぇ俺、あんまり焦らされるの好きじゃないんだ」

 そして男の幼い容姿が残忍な笑みを乗せ始めて、俺は仕方なしに口を開いた。顔を背けながら、小さく。

「…探してたんだよ、光を」

「光?」

 男は俺の言葉にピクリと反応した。俺はそれを意に関せず一つ小さく頷いた。

「赤い光がこっちのほうで光ったから、気になってでてきたんだよ。…もういいだろ、離せよ!」

 俺は言いきって、逸らしていた顔を男の方に向けた。そこで、俺はびくりと震える。

「へぇ…見えたんだ、あの光」

 何故ならば、視線の先にあった、そう呟いた男の表情が酷く空恐ろしいものだったからだ。
 けれども同時に、奇しくも近くで見た男の双眸は青みがかった黒で、俺は一瞬息を止めた。光を溜めた虹彩がキラキラと煌めいて不覚にも綺麗だと思ってしまったからだ。そんな自分を戒めるべく、俺は今度こそ舌打ちした。
 俺のその行動にますます男の双眸が細められて剣呑な色を乗せた。

「な、なんだよ!」

 俺は男の言い分の意味はわからなくとも、とりあえず強気な口調でそう言葉にした。
 そうすれば男はニコリと件の嫌な笑みを浮かべて「そっか」と言った。俺の問いに答える気はないようだ。

「ねぇカナタちゃん」

 かわりに男は、再び俺の名前を呼んだ。なんだ、と視線を向ければ、男はまた件の嫌な笑みを浮かべたまま、グイと俺の腕を引いた。

「っわ…!」

 無理矢理引かれたせいで男の胸元に引き摺り込まれた俺は、小さく声を上げた。次いで俺が非難の声を上げようと顔を上げれば、それを遮るように男は言った。

「それってさ―――こういうの?」

 そして―――。
 男の空いた片手が振り上げられるのと同時に、俺の背後からは凄まじい爆風と爆音、そして『それ』に背けているにも拘らず目の奥がチカチカするような光の奔流が視界に押し寄せてきた。
 それはまさしく、あの時の、あの赤い閃光だった。


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あきゅろす。
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