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月陰の輝き
19

ため息をつきたくなるが、男同士であろうとそれが純粋な恋愛であるならば別に構わない、と思う。まぁ、美月と王子の話を聞いた後だったのでそれほど衝撃はなかった気がする。おそらくこの騎士隊に世話になるのは短い間だし、俺にはどうせ関わりはない事だ。自由にどんな恋愛だろうとすればいい。

あぁそうか。ということは、隊長がさっき気をつけろと言ったことは「嫉妬」か。そういえば、ついさっき意味ありげに俺に突っ掛かってきた騎士がいたが、それもそういうことか? それとも単に俺が落人であるからか? いや、あるいはどっちもか。

とりあえず、俺があいつらに惚れてるだとか誤解されないように態度は気をつけなければ。といっても、まず男相手に誤解されるような態度って何なのか疑問だが。

「あぁ、そうか! そういえば聞いたことがあったな。お前さんのとこじゃ違うんだったか」

今まで訝しげに俺を見ていた隊長が閃いたといった風に言った。

「何がですか?」

「当たり前すぎて言わなかったが、この世界じゃ大半の奴はバイなんだよ」

「………は!?」

「あ、バイって分かるか? 男も女も同じように愛せる奴のことなんだが」

「マ、マジですか……?」

つまり、女の子と恋愛するように男ともそういうことをするのが普通に、日常的なことだっていうことか。駄目だ、あまりに現実感がなさすぎて想像できない。カルチャーショックってレベルじゃないぞ。あぁ、こんな思いをこの世界に来て何度したことか……。

「だからな、」

呆然としていたが、声がしたことで意識を戻した。すると隊長が一歩俺に近づき、にやりと笑った。嫌な予感がしたと同時に、急に腰を掴まれて引き寄せられ、隊長の大きな手が俺の顎に添えられた。至近距離の顔が言う。

「お前さんだってそういう対象になり得るんだ」

「……!」

ゆっくりと発せられた重低音が俺の鼓膜を揺さ振った。俺はすぐに離れようと思って身をよじらせたが、ぐっと腰に添えられた手の力が強まってそれは阻まれる。どういうつもりだ、と思い隊長を見返せば、なぜかそのまま隊長の顔が近づいてきた。


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